2003.11.13

【再掲】【AHA2003速報】 AMI患者の予後改善に資する治療戦略が検証、新クラスの心不全治療薬の第2相試験結果も−−10日のLBCTより



 11月10日のプレナリー(必須)セッション3「Late Breaking Clinical Trials」では、急性心筋梗塞(AMI)患者の予後改善を目指した、新しい治療戦略に関する注目の臨床試験結果が発表された。重症の心不全患者を対象とした、新しいクラスの利尿薬の臨床試験結果も報告された。

 「PRIMO-CABG」試験からは、冠動脈バイパス(CABG)施行時に補体C5阻害薬のペキセリズマブを投与すると、亜急性期の予後は変わらないものの周術期の死亡や合併症を減らす効果があることがわかった。骨髄細胞を用いる心筋再生医療を、無作為化試験で評価した「BOOST」は、AMIのPCI治療後に冠動脈経由で骨髄細胞を移植することが、左室機能を統計学的に改善し得ることを示した。

 AMI後に左室機能が低下したハイリスク患者の治療では、「VALIANT」試験が初めて、A2受容体拮抗薬がACE阻害薬の代替薬になり得ることを示すエビデンスをもたらした(関連トピックス参照)。重症心不全患者に対する治療では、バソプレッシン受容体拮抗薬のトルバプタンを追加投与すると、体液貯留がすみやかに改善されることが「ACTIV in CHF」試験から示された。以下に試験結果を紹介する。

◆ PRIMO-CABG
(Pexelizumab for the Reduction of Infarction and Mortality in Coronary Artery Bypass Graft Surgery)

 補体C5に対するヒト化モノクローナル抗体のペキセリズマブが、CABG後の予後を改善し得るかを調べた第3相試験。補体C5カスケードは、虚血−再灌流時の心筋傷害や炎症を促進する。このカスケード進行をブロックするペキセリズマブは、「COMMA」(Complement Inhibition in Myocardial Infarction Treated with PTCA)試験と「COMPLY」(Complement Inhibition in Myocardial Infarction Treated with Thrombolytics)試験で、PCIや血栓溶解薬によるAMI治療に併用すると、梗塞巣の縮小効果はないが生存率を改善する効果が示唆されている。

 対象患者は、心疾患の危険因子を一つ以上持ち、CABGのみ、またはCABGと弁置換術を同時に受ける3099人。無作為にペキセリズマブ群(1546人)とプラセボ群(1553人)に割り付け、急性期(0〜4日)、亜急性期(0〜30日)の予後を評価した。

 1次評価項目はCABGのみを受けた患者(全体の9割:2746人)の30日後の複合心イベント(死亡+非致死性心筋梗塞=MI)発生率で、ペキセリズマブ群(1378人、9.8%)でプラセボ群(1368人、11.8%)より低い傾向はあったが、有意差には至らなかった(p=0.069)。2次評価項目の、弁置換術を同時に受けた人も含めた30日複合心イベント発症率は、ペキセリズマブ群で相対的に18%、有意に低くなった(p=0.030)。興味深いのは急性期予後の改善効果で、CABG単独群で26%、全体でも24%、相対的に最初の4日間の複合心イベント発生率が下がることが判明。研究グループは、ペキセリズマブにはCABG周術期の死亡や合併症を減らすユニークな作用があると考察している。

◆ ACTIV in CHF
(Acute and Chronic Therapeutic Impact of a Vasopressin 2 Antagonist (Tolvaptan) in Congestive Heart Failure)

 重度の心不全で入院した患者319人を対象に、通常治療にバソプレッシン2受容体拮抗薬のトルバプタンを追加することで、心不全の悪化を防げるかを調べたプラセボ対照第2相試験。バソプレッシンは抗利尿ホルモン(ADH)とも呼ばれる神経ホルモンで、心不全患者で作用が亢進していることが確認されている。

 患者を無作為に4群に分け、利尿薬やACE阻害薬、ジゴキシン、β遮断薬などによる十分な標準治療を行った上で、トルバプタン30mg、60mg、90mgまたはプラセボを投与した。対象患者の平均年齢は62歳、7割が男性、LVEFは平均24%。7割が高血圧、半数弱が糖尿病を合併しており、4割弱にMIの既往、4割弱に心房細動(AF)があった。

 一次評価項目の、急性期(投与後24時間)における体重減少幅(体液貯留の改善)は、プラセボ群(0.9kg)よりトルバプタン群(3群の平均:2.0kg)で有意に大きく、トルバプタンの追加投与が急性期治療に有用であることが判明。もう一つの一次評価項目である、慢性期(0〜60日)の心不全の悪化(死亡+不全による入院または緊急来院)は、総死亡はトルバプタン群で少ない傾向があるものの心不全の悪化は多い傾向があり、総合するとプラセボ群との有意差は認められなかった。

 こうした効果や副作用発生率に用量依存性はみられなかったことから、研究グループは現在、最小用量であるトルバプタン30mgの追加投与で心不全の悪化を予防できるかを調べる、より大規模なプラセボ対照試験「EVEREST」(Effects of Vasopressin antagonists in hEart failuRE: outcome Study with Tolvaptan)を進めている。

◆ BOOST
(BOne MarrOw Transfer to Enhance ST-elevation Infarct Regeneration)

 骨髄細胞を用いる心筋再生療法の有効性と安全性を、無作為化比較試験で検証したドイツの臨床試験。ST上昇を伴う一枝病変のAMIに対し、ステント留置PCI治療を受けた60人を無作為に2群に分け、一方にのみ患者自身の骨髄有核細胞をバルーンカテーテルを用いて責任血管に移植した。1次評価項目はLVEFの改善幅で、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いてPCIの3〜4日後(移植例は前日)と6カ月後に測定を行った。PCIから初回LVEF評価までの平均経過時間は3.5日、移植までの平均経過時間は4.8日。

 患者の平均年齢は、骨髄移植群(30人)が53歳、対照群(30人)が59歳。移植群の20人、対照群の22人が男性で、糖尿病は3人ずつ、高血圧は順に9人と13人、高脂血症は9人と7人が合併しており、移植群の18人、対照群の17人が喫煙者だった。発症からPCIまでの経過時間の中央値は、移植群が9.8時間、対照群が8.0時間。こうした患者背景に有意差はなく、退院後はほぼ全員がアスピリン、ACE阻害薬(またはA2受容体拮抗薬)、β遮断薬、スタチン系薬の投与を受けた。骨髄移植は、骨髄液を朝に採取、洗浄・濃縮してその日の夜に移植するというシンプルな方法で、移植骨髄液には有核細胞が平均25×108個、うちCD34陽性細胞が平均9.5×106個含まれている。

 ベースラインのLVEFは、骨髄移植群が50.0%、対照群が51.3%。6カ月後は順に6.7%、0.7%の改善がみられ、改善幅は骨髄移植群で有意に大きかった(p=0.0026)。移植群のLVEFの改善幅と、移植細胞数(有核細胞、CD34陽性細胞、造血コロニー形成細胞)とには特に相関は認められなかった。追跡期間中の死亡例はなく、移植や移植手技(ステント内でバルーンカテーテルを膨らませる)による心筋傷害(トロポニンT値の上昇)や不整脈の発生、再狭窄の亢進は認められなかった。研究グループは、少数例での検討ではあるが、AMI後患者に対する冠動脈経由の自家骨髄移植は安全に行え、左室機能を改善し得ると結論付けている。より心筋再生に対するニーズが高い、重症例での検証が待たれる。(内山郁子)

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.6.26 骨髄移植による血管再生療法、高度先進医療に初承認
◆ 2003.9.9 日本心臓病学会速報】ここまで来た「心筋再生」医療−−マウスで細胞株樹立、急性期にはサイトカイン治療も

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