2003.11.13

【AHA2003速報】 循環器疾患と闘うため、今こそ人口全体の予防に目を向けるべき時だ−−会長講演

 「これまで我々は、持てる知識を分かりやすく伝えて普及を図り、活用する努力を怠ってきた。今こそ人口全体における予防への取り組みに踏み切るべき時だ」。学会長(president)のAugustus O. Grant氏は11月9日に行われた学会長講演でこう強調した。

 臨床医としての知識と能力を公衆衛生学的アプローチに振り向けるべきだとするGrant氏の発言は、ここにきて循環器疾患による死亡率の低下にブレーキがかかり始めたことに対する危機感の表われが基になっている。1970年以降、虚血性心疾患による死亡率は半減し、脳梗塞はさらに20年前の1950年代から減少し続けてきた。しかし、「この10年、冠動脈疾患による死亡率の低下が遅くなっており、脳梗塞による死亡率のグラフも下げ止まってしまった」(Grant氏)。

 こうした状況の悪化を今後さらに加速する要因としてGrant氏は高齢化と肥満の進展を指摘した。米国でも今後、ベビーブーマー世代がリタイアの時期を迎え、2030年には5人に一人が65歳以上の高齢社会に突入する。「何もしなければ虚血性心疾患による死亡率は2.5倍になる」。「ただし、これは現時点の状況が全く変わらないとした場合の話で、1976〜1980年に比べ、BMIが30以上の比率は倍増しており、肥満者と過体重者を合わせると6割を超える」という。

 循環器治療の進展はめざましく、埋め込み型除細動器などの最新技術が数多く登場しているが、医療費の高騰は限界にきており、コスト抑制は不可欠だと指摘する。こうした点からも、臨床医も含めた総力で予防活動に力を注がない限り、循環器疾患の蔓延をくい止めることができそうもないというのがGrant氏の指摘だ。

 「これまでの(臨床医療に関する)進歩を捨て去る必要はない。しかし、我々が予防活動と医療の質向上に大胆に取り組み、循環器疾患の世界的な拡大に挑むことは、社会にとって大きな利益になる」と強調した。(中沢真也)

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