2003.11.12

【AHA2003速報】 ASO患者へのG-CSF投与で血行が改善、効果は骨髄細胞移植に匹敵

 岐阜大学第二内科講師の荒井正純氏らは、閉塞性動脈硬化症(ASO)などによる重度下肢虚血患者49人を対象に、通常の薬物療法(対照群)と骨髄細胞移植、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤投与の3群間で治療効果を比較する無作為化オープン試験を実施。細胞移植やG-CSF投与を受けた患者では、痛みが軽減して歩行距離が伸び、虚血脚の血行も改善していることを確認した。細胞移植とG-CSF投与の効果はほぼ同等で、荒井氏は「少数例での検討ではあるが、G-CSFは重症の下肢虚血に対する新たな、非侵襲的な治療法になる可能性がある」とみている。研究結果は、11月11日のポスターセッションで発表された。

 重症の下肢虚血に対する細胞療法は、今年7月から高度先進医療が適用された(関連トピックス参照)、期待の再生医療。ASOやバージャー病患者を対象とした「TACT」(Trial for Therapeutic Angiogenesis Using Transplantation)研究で、症状の改善効果が示されている。しかし、移植には自家骨髄、あるいは末梢血幹細胞の採取が不可欠で、侵襲性が高かった。

 末梢血から幹細胞を採取する場合はG-CSFを投与するが、この際に、骨髄中のCD34陽性細胞が血液中に流れ出ることがわかっている。荒井氏らは、動物実験で「G-CSFの投与」だけで血管新生が起こり、血行が改善することを確認。細胞を虚血部に移植しなくても、G-CSFを投与すれば虚血が改善される可能性があると考え、無作為化比較試験を実施した。

 対象は、ASOまたはバージャー病による下肢虚血があり、虚血の程度を示すFontaine分類が3〜4度で、血行再建術が行えない患者。無作為に3群に分け、対照群(15人)には十分な薬物療法を続行。骨髄移植群(14人)は麻酔下で骨髄液を600〜800ml採取、単核細胞を単離・濃縮(50ml)して、虚血部に4.5cm2おきに細胞を移植した。G-CSF群(15人)には、白血球数が1μl当たり3万個を超えないように注意しながら、2〜5μg/kgのG-CSFを1日1回、連続10日間上腕の皮下に投与。同時に抗凝固薬を投与して血栓症などの予防策をとった。患者の平均年齢は68歳、6割が男性で、4割がFontaine3度。半数に糖尿病、4割に心筋梗塞の既往、4分の1に脳血管障害があった。

 その結果、安静時の痛みスコアは、対照群では不変だったのに対し、骨髄移植群、G-CSF群ではいずれも有意に改善。無痛歩行可能距離(歩ける人でのみ評価)も、対照群では不変だったが、骨髄移植群、G-CSF群ではそれぞれほぼ半数が、より長く歩けるようになった。足関節上腕血圧比(ABI)などで評価した1カ月後の下肢の血行は、骨髄移植群、G-CSF群でのみ有意な改善がみられ、改善の程度はこの2群で同程度だった。

 荒井氏らの臨床試験では、臓器不全や脾臓肥大、心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な副作用は1例も起こっていない。だが、G-CSFを用いる血管再生医療では、不安定狭心症患者を対象とした臨床試験で心筋梗塞の発生が報告され(関連トピックス参照)、安全性に対する懸念が生じている。この点に関し荒井氏は「我々の試験プロトコルではG-CSFの投与量を低く抑えており、さらに、白血球数のモニタリングを行って3万個を超えないように投与量を調節した。抗凝固療法も併用しており、このような点で違いがあったのではないか」と考察。しかし、安全性を考えるとこれ以上投与量を増やすのは難しいとみており、「効果をさらに高める薬剤との併用療法について、今後は研究を進めたい」と荒井氏は話した。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.6.26 骨髄移植による血管再生療法、高度先進医療に初承認
◆ 2003.11.12 AHA2003速報】G-CSFを用いる血管再生医療にリスク、NIHの第1相試験で12人中二人に重篤な副作用

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