2003.11.12

若年時の心疾患リスクが「死の1年間」の医療費を規定

 約4万人を登録した米国の職域コホート「CHA」(Chicago Heart Association Detection Project in Industry)の追跡研究から、若年時に心血管疾患の危険因子をたくさん持っていた人ほど、亡くなる時にかかる医療費が高く付くことがわかった。同じコホート研究からは、心血管疾患リスクが通常の医療費にも相関していることが示されており、研究グループは「若い時から心疾患リスクの改善に努めることで、若年時から死ぬまでの医療費を下げることができる」と考察している。研究結果は、11月10日の一般口演「CVD Risk Factors: Insulin, Metabolic Syndrome, Lipids, Diet」で報告された。

 この研究を行ったのは、米国Northwestern大学のMartha L. Daviglus氏ら。Daviglus氏らは、Chicago近郊の企業や施設への勤務者を登録した職域コホート「CHA」のデータを解析。登録時(1967〜1973年、登録時年齢:31〜64歳)の血圧、総コレステロール値、体格指数(BMI)など心血管疾患の危険因子数で4群に分け、2000年まで追跡して、65歳以上で亡くなった登録者について死ぬ1年間の医療費と登録時の危険因子数との関連を調べた。医療費の解析には、米国の公的高齢者医療保険であるメディケアのデータを用いた。

 検討した危険因子は、1.高血圧:血圧が140/90mmHg以上または降圧薬の服用、2.高脂血症:総コレステロール値が240mg/dl以上、3.肥満:BMIが30以上、4.喫煙、5.糖尿病、6.心電図異常、7.心筋梗塞(MI)の既往−−の七つ。危険因子数が0の人を「超低リスク」、1を「低リスク」、2を「中等リスク」、3以上を「高リスク」と定義した。

 2000年までに65歳以上で亡くなった人数は、男性が3652人、女性が2598人。危険因子数が増えるほど登録時年齢が上昇する傾向はあったが、その差はわずかだった(男性:超低リスク52.5歳、高リスク52.7歳。女性:順に53.1歳、54.3歳。女性のみ有意差あり)。死亡時年齢は逆に、危険因子数の増加に伴い低下する傾向がみられたが、その差も同様にわずかだった(男性:順に78.3歳、76.3歳。女性:順に79.6歳、78.5歳。男性のみ有意差あり)。

 次にDaviglus氏らは、亡くなる1年間にかかった医療費を、メディケアの公開医療費データを用いて算出した。すると、男性では超低リスク者から順に、3万5555ドル、4万2029ドル、4万1670ドル、4万6827ドルとなり、リスクに応じて医療費が増えることが判明(傾向へのp=0.03)。女性も順に3万7416ドル、3万8257ドル、4万87ドル、4万1605ドルとなり、有意な差とはならなかったが増加傾向が認められた。

 心血管疾患の治療にかかった医療費のみを抽出して計算すると、この傾向はさらに顕著になった。男性では順に7915ドル、1万347ドル、1万1443ドル、1万7431ドル。女性は7637ドル、7885ドル、1万815ドル、1万3935ドルとなり、男女ともに心疾患リスクが高くなるほど有意に医療費が増加することがわかった(傾向へのp<0.001)。

 このデータが示すのは、「死の1年間」にかかる医療費には男性で3万5555〜4万6827ドル(約387万〜約509万円)、女性では3万7416〜4万1605ドル(約407〜約452万円)の幅があり、若年時の心血管疾患リスク数に応じて高くなるということ。社会保障にかかる金額としては、1〜2年早く亡くなることで減少する年金支給額と相殺されるとの見方もあるが、Daviglus氏は「死ぬ前の1年間は最も医療費がかかる時期だが、若年時から生活習慣の改善、特に心血管疾患リスクの低下に努めることで、一人当たりの医療費を数千ドルは節約できる」と述べ、医療費の増加傾向に歯止めをかけるためにも若年時からの介入が重要であると強調した。(内山郁子)

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.10.24 公衆衛生学会速報】喫煙・肥満・運動不足の中高年者は医療費4割アップ−−レセプトベースの大規模コホート研究で判明

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