2003.11.11

【AHA2003速報】 G-CSFを用いる血管再生医療にリスク、NIHの第1相試験で12人中二人に重篤な副作用

 米国国立衛生研究所(NIH)で行われた、不安定狭心症患者12人を対象にした顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤の臨床試験で、同薬との関連が否定できない重篤な副作用が二人に生じていたことがわかった。一人は治療6日後、もう一人は3週間後に心筋梗塞を起こし、うち一人は死亡したという。不安定狭心症患者はもともと心筋梗塞を起こしやすく、少数例の試験でもあり偶然の結果である可能性もあるが、「冠動脈疾患があるハイリスク患者にG-CSF製剤を投与する場合は、重篤な副作用が起こり得ることを念頭に置くべき」と研究グループは警鐘を鳴らしている。研究結果は、11月10日の一般口演「Determinants of Outcome in Coronary Disease」で報告された。

 この研究を行ったのは、NIHの関連機関である米国心肺血液研究所(NHLBI)心血管部門のJonathan M. Hill氏ら。Hill氏らは、血管拡張薬や脂質改善薬などの十分な投与を受け、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)術や冠動脈バイパス術(CABG)を何度も行い、それでも心筋に虚血が確かに生じており症状が消えない不安定狭心症患者12人を対象に、G-CSFを5日間投与して効果と安全性を調べた。

 G-CSFは骨髄細胞を増やすサイトカインで、心筋・血管の再生を促す可能性があるとして、再生医療分野での注目が高まっている(関連トピックス1参照)。試験ではG-CSFを1日10μg/kg、連続5日間投与。投与前日(Day1)と投与終了24時間後(Day6)、投与終了9日後(Day14)の3回、白血球や前駆細胞数、凝固系、炎症系の検査値を調べた。

 対象患者の血中の血管内皮前駆細胞(EPC、関連トピックス2関連トピックス3参照)数は、健常ボランティア28人の平均値よりはるかに低く、これらの患者では血管内皮の傷を修復する機構が障害されていることが伺われた。G-CSFの投与で、Day6の白血球数はDay0の6倍近くに増え(1μl当たり6800個→3万9700個)、単核細胞に占めるEPC(表面マーカーCD34またはCD133が陽性)の比率も、ほぼ0%から約1%にまで増加した。このことは、G-CSFが骨髄単核細胞のなかでも特にEPCを効率良く増やす作用があることを示している。ただし、作用には大きな個人差があり、健常者の平均レベルを超えたのは一人だけで、ほとんど反応がみられない人もいた。また、Day14には全員、投与前の水準に戻り、G-CSFの作用が一過性であることもわかった。

 次にHill氏らは、血中の凝固系マーカーや炎症系マーカーの変動性を調べた。すると、凝固系マーカー(トロンビン、アンチトロンビン、血小板因子4=PF4)はGCS-Fの投与前後で変わらなかったが、炎症性マーカーであるC反応性蛋白(CRP)値は、Day0の3.8mg/l(0.038mg/dl)からDay6の8.8mg/l(0.088mg/dl)へと、大きく上昇していることがわかった(p<0.022)。

 また、治療との関連が否定できない重篤な副作用は二人に生じた。一人は、6日目にST低下を伴う胸痛を訴え、心筋逸脱酵素(トロポニンI、クレアチンキナーゼ)の上昇が認められた。もう一人は、3週間後に心筋梗塞を起こし死亡した。副作用を起こした人で特にCRP値、あるいはEPC数が多かったわけではなく、明確な関連は不明だが、12人中二人で命に関るイベントが生じたことは事実だ。

 Hill氏は「重篤な冠動脈疾患がある患者12人を対象とした第1相試験で、G-CSF製剤が凝固系を亢進させることなく、EPCを誘導できることがわかった。しかし、CRPを上昇させ、プラークを不安定化させる恐れがある」と考察。冠動脈疾患患者にG-CSF製剤を投与する臨床試験では、プラークの不安定化による心臓発作など、重篤な副作用が起こり得ることを考慮すべきと強調した。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.9.9 日本心臓病学会速報】ここまで来た「心筋再生」医療−−マウスで細胞株樹立、急性期にはサイトカイン治療も
◆ 2003.10.2 国際動脈硬化学会速報】血管内皮前駆細胞、喫煙者では少ないが4週間の禁煙でほぼ非喫煙者レベルに戻る
◆ 2003.2.19 血中の血管内皮前駆細胞数が心血管疾患リスクと相関

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