2003.11.11

PWVが外来管理心不全患者の「入院リスク」を予測

 動脈硬化の指標として注目されている脈波伝播速度(PWV)が、軽度〜中等度の慢性心不全患者の、心不全悪化による入院のリスクを予測し得ることがわかった。約500日の観察期間で、慢性心不全患者72人中21人が入院したが、PWV値が高い患者では有意に入院率が高かったという。稲城市立病院心血管治療部門部長の目黒知己氏らによる研究結果で、11月9日のポスターセッションで報告された。

 PWVは特に日本で研究が盛んな検査指標で、臨床的な意義を調べる前向き研究も始まっているが(関連トピックス参照)、検査値が何を反映しているのかについては解明途上にある。「当院では約2年前から、循環器疾患の患者さんに対してPWVを測定してきたが、正直なところどれほどの意義があるのか疑う気持ちもあった。しかし、ある日心不全の患者さんのデータを整理していたところ、PWV値が高い人に入院例が多いことに気付いた」。目黒氏は研究のきっかけをこう話す。

 対象は、心不全の重症度がNYHAの2〜3度で症状が安定しており、外来管理が可能な慢性心不全患者72人(平均年齢:69歳、平均左室駆出力=LVEF:44%)。目黒氏らは血圧や神経体液性因子値などに加え、動脈硬化の進展度の指標である上腕−足首間のPWV(baPWV)と足関節上腕血圧比(ABI)を測定。心不全の悪化(肺水腫)による入院率に関連する検査値を、多変量解析で評価した。

 その結果、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と並び、baPWV値が独立の因子として浮上。17m/秒を閾値に高値群と低値群に分けると、観察期間中の入院率は、高値群が約70%、低値群が約20%と大きな差が付いた(p<0.001)。

 ただし、高値群と低値群とでは、LVEFや収縮期血圧、心拍数はほぼ変わらないものの、ABI(1.05対1.11)や脈圧(56.2mmHg対47.7mmHg)、さらに年齢(76歳対58歳)に有意な差がある。そこで目黒氏らは、60歳代後半から80歳前後までの、患者が両群に存在する年齢層だけを取り出して、心不全悪化による入院率を改めて比較した。すると、その年齢層でも高値群と低値群の入院率には、やはり有意な差があることがわかった(約80%対約10%、p<0.05)。

 神経体液性因子(血清BNP値、レニン活性、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)値、アルドステロン値)は、baPWVの高値群と低値群とでほとんど変わらない。しかし、LVEFが45%以上の人だけを対象にすると、baPWV高値群でBNP値が有意に高くなった。また、入院例だけの検討では、baPWV高値群で入院時の収縮期血圧が有意に高くなっていた。

 以上から目黒氏は「baPWV値が高い人では、血管や心臓そのものが硬くなっているために拡張不全を生じ、後負荷の増加ともあいまって肺水腫を起こしやすくなっているのではないか」と考察。今後は外来baPWV値が高い人には注意深いケアを行うと同時に、治療への反応性をbaPWV値で検出できるかについても検討を進めたいと話した。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.11.4 日本高血圧学会速報】脈波伝播速度は高血圧性臓器障害の進展をどの程度予測し得るか? 「J-TOPP」研究スタート

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