2003.11.10

【AHA2003速報】 AMI後患者の予後が抗酸化ビタミン療法で改善、初のプラセボ対照無作為化二重盲検試験で判明

 急性心筋梗塞(AMI)で入院、血栓溶解療法などで救命された患者の短期予後が、抗酸化ビタミンの投与で改善し得ることがわかった。AMI患者800人を対象に行われた、ポーランドの多施設共同研究による。年齢や性別、糖尿病の有無など予後に影響を与え得る因子で補正後も、30日後の心イベント発生率(心疾患死+MIの再発)はビタミン療法群で18%有意に低かったという。研究結果は、ポーランドGrochowski病院循環器部門のTomasz Jaxa-Chamiec氏らが、11月9日のポスターセッションで報告した。

 心筋の再灌流傷害は様々な機序で生じるが、その一つが虚血−再灌流時に生じる酸化ストレス。Jaxa-Chemiec氏らは、急性期に積極的な抗酸化ビタミン療法を行えば、AMI患者の予後を改善し得るのではないかと考え、ポーランド国内36カ所の医療施設でプラセボ対照二重盲検試験を行った。

 対象は、胸痛から24時間以内に来院、心電図のST上昇と心筋酵素の逸脱が確認された、21歳以上のAMI患者800人。ショック状態や腎不全、重篤な疾患の合併者は対象から除いた。平均年齢は62歳で7割が男性、9割弱が初回のMIで、4割が前壁梗塞、8割は心不全を合併していない(Killip分類の1度)。65%が喫煙者で高血圧は半数弱、高脂血症は3割、糖尿病は15%が合併していた。こうした患者背景は両群間でほぼ均等だった。

 研究グループは患者を無作為に2群に分け、一方にビタミンCとビタミンEを用いる積極的な抗酸化ビタミン療法を実施。30日間追跡して予後を比較した。抗酸化ビタミン群(402人)には、再灌流療法後にビタミンC1000mgを12時間かけて点滴した後、ビタミンC(1日量:1200mg)とビタミンE(1日量:600mg)を30日間経口投与。プラセボ群(398人)には生理食塩液を同様に点滴した後、プラセボを30日間服用してもらった。発症から再灌流療法(大半が血栓溶解療法)までの経過時間は平均2.8時間、発症からビタミン療法開始までの経過時間は平均6.5時間で、群間の差はなかった。

 その結果、一次評価項目である30日後の「心疾患死または非致死性の急性冠症候群(ACS)発症」は、抗酸化ビタミン療法群で相対的に32%低くなる傾向があることが判明(p=0.08、有意差なし)。多変量解析から「高齢」(70歳以上、オッズ比:2.0)、「糖尿病」(同:1.9)、「AMIの既往」(同:1.7)と並び、抗酸化ビタミン療法も独立した予後因子であることがわかった(オッズ比:0.82、95%信頼区間:0.66〜1.0)。患者背景別の解析では、特に女性で抗酸化ビタミン療法の予後改善効果が高いことが明らかになった(オッズ比:0.46、p=0.02。男性のオッズ比:0.89、有意差なし)。

 副作用は消化器症状が7人(2.0%)、血尿が二人(0.5%)に生じたが、発生率にプラセボ群との差はなく、脱落率はむしろビタミン群の方が低い傾向があった。

 Jaxa-Chemiec氏は「比較的小規模の試験ではあるが、プラセボ対照の無作為化試験で、抗酸化ビタミン療法がAMI患者に対し安全に行え、予後を改善し得ることを示せた意義は大きい」と考察。しかし、AMIに対する治療法は国によって大きく異なり、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が主体のわが国にはそのまま当てはめられない可能性がある。

 また、より長期的な予後への影響など検討課題も残っており、「大規模な試験を行いたいが、ビタミン剤は安価なため製薬企業の関心が薄い。今回の試験も企業のサポートなしに行ったが、我々にはこれ以上の規模の試験は財政的に行えない」とJaxa-Chemiec氏は打ち明ける。今回のAHAでの発表結果に「興味を持ってもらえたなら、是非より大規模の追試を行って、今回我々が得た結果が正しいかどうかを検証して欲しい」と同氏は呼びかけている。(内山郁子)

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