2003.11.10

【AHA2003速報】 看護師らによるケースマネジメントが医療水準を向上、魚油サプリメントの抗不整脈効果にも新知見−−9日のLBCTより

 11月9日のプレナリー(必須)セッション1「Late Breaking Clinical Trials」では、これまで十分な医療を受けてこなかった患者層に対する心疾患予防介入や、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施施設が不足している地域での医療戦略など、地域医療・保健政策を考える上で重要な知見が紹介された。

 低所得者やホームレス(路上生活者)、マイノリティー(非主流人種)など、米国では十分な医療が受けられないことが多い人々に対する介入策に関しては、「HDOM」と「WITTI」の2試験が発表。「HDOM」では、看護師などによる個別ケア(ケースマネジメント)を医療に取り入れることで、言語や教育レベル、所得など、効果的な介入を行う上で妨げとなる様々な要素を乗り越えられることがわかった。「WITTI」では、女性の冠動脈疾患再発予防には主治医の啓発も含めた積極的な介入が必要だが、元々受けていた医療水準が低いマイノリティー女性では、介入の効果が上がりやすいことが明らかになった。

 また、PCI実施施設などが不足している地域では、治療が受けられる施設に患者を移送するため、急性心筋梗塞(AMI)の診断からPCI実施にまで時間がかかる。その間の「前処置」としては、血小板凝集阻害薬の単剤投与が、血小板凝集阻害薬と血栓溶解薬の併用投与よりも副作用が少なく、効果は同等であることが「BRAVE」試験で示された。このほか、AMI既往者を対象としたオープンラベルのプラセボ対照大規模試験「GISSI Prevenzione Trial」で突然死の予防効果が示され、抗不整脈効果への期待が高まった魚油サプリメントに関し、初の二重盲検試験結果が発表された。以下に試験結果を紹介する。

◆HDOM
(Heart Disease on the Mend)

 米国California州にある6カ所の無料診療所を受診、高血圧や高脂血症、喫煙、低栄養などの心血管疾患リスクを一つ以上持つことがわかった148人を対象に、看護師や栄養士によるケースマネジメントが心疾患リスクの改善につながるかを調べた。対象者の多くは低所得者や無保険者、ホームレスなどで、平均年齢は57歳、半数強が女性。半数強はヒスパニック(メキシコ系アメリカ人)で、45%は英語を話せなかった。主な保有心疾患危険因子は、2型糖尿病(54%)、高脂血症(67%)、高血圧(70%)、肥満(38%)など。研究グループは対象者を2対1の割合でケースマネジメント群(99人)と通常治療群(49人)に割り付け、1年間追跡した。脱落率は9%で群間の差はない。

 一次評価項目の収縮期血圧(SBP)、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値は、いずれも1年後はケースマネジメント群で有意に低いことが判明。総コレステロール/LDLコレステロール比や空腹時血糖値などその他の危険因子や、身体活動性、栄養状態なども、ケースマネジメント群で有意に改善していた。米国では通常の医療システムの埒外に置かれることが多い人でも、看護師などによるケースマネジメントを組み込むことで、心血管疾患の予防へとつなげられることがわかった。

◆ BRAVE
(Bavarian Reperfusion Alternatives Evaluation trial)

 急性心筋梗塞(AMI)を起こした253人を対象に、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の前処置として、血栓溶解薬の単剤投与と血栓溶解薬・血小板凝集阻害薬の併用投与とのどちらが優れるかを無作為化比較した。血栓溶解薬には組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)のレテプラーゼ(海外での商品名:Retevase)、血小板凝集阻害薬には糖蛋白(GP)2b/3a受容体拮抗薬のアブシクシマブ(海外での商品名:ReoPro)を用いた。レテプラーゼは通常の半量(5U)を30分おきに2回注射。アブシクシマブは両群とも、0.25mg/kgを注射した後に0.125μg/kg/分で12時間点滴投与した。

 患者の平均年齢は63歳、8割が男性で大半が初回のAMI。研究が行われたドイツ・バイエルン(ババリア)地方では、PCIが行える医療機関が限られており、対象患者の4分の3はPCI実施施設への移送が必要だった。受診から無作為化までは平均3時間、無作為化からPCIまでは平均2時間を要した。

 一次評価項目の「PCI後5〜10日の梗塞巣の大きさ」は、併用群が左室重量の13%、単剤群が11.5%で、両群に有意差は認められなかった。二次評価項目の30日死亡に差はないが、再梗塞や脳卒中、重度の出血は併用群で多い傾向があった。なお、PCI前の血管開存率(TIMIフロー)には両群で大きな差があり、併用群の40%、単剤群の18%がTIMI3、併用群の25%、単剤群の50%がTIMI0。「血流の早期再開」という観点では併用群が優れるが、最終的な梗塞サイズに差はないという、示唆深い結果となった。研究グループは「PCIの前処置として、レテプラーゼとアブシクシマブの併用療法は、アブシクシマブの単剤投与より優れてはいない」と結論付けている。

◆ 魚油サプリメントの不整脈予防効果

 n-3系(ω-3系)多価不飽和脂肪酸の不整脈予防効果を、プラセボ対照二重盲検で無作為化評価した初の臨床試験。対象は、持続性の心室細動(VT)または心室頻拍(VF)があり、体内植え込み型除細動器(ICD)を装着している不整脈患者200人。万一試験中に致死的な不整脈を起こした場合も除細動で救命されることに加え、ICDに不整脈波形が記録されるため不整脈予防効果の客観的な評価が可能になることから、この患者群が試験対象に選ばれた。抗不整脈薬を服用していたり、週1回以上油分の多い魚を食べる人は対象から除いた。

 対象患者は、魚油サプリメント(1日量1.8g、エイコサペンタエン酸=EPAを42%、ドコサヘキサエン酸=DHAを30%含む)またはプラセボ(オリーブオイル入りカプセル)を服用。2年間追跡してVT/VFの発症予防効果を評価した。患者の平均年齢は63歳、9割弱が男性で4分の3に冠動脈疾患、半数強にAMIの既往がある。登録時の不整脈は、3分の2がVT、3分の1がVF。

 赤血球膜の含有DHA、EPA量は、服用1カ月後には魚油サプリメント群が有意にプラセボ群を上回り、3カ月後以降はプラトーに達した。しかし、意外なことに一次評価項目のVT/VF非発症率は、有意差はないものの魚油サプリメント群の方が低い傾向を示した。なかでも登録時にVTを呈していた人では、有意に魚油サプリメント群でVT/VF非発症率が低くなった。赤血球膜の含有n-3不飽和脂肪酸量で4群に分けると、最も含有量が多い群でVT/VF非発症率が最も低くなった。結局、疫学研究やAMI既往者を対象とした介入研究から示唆された「抗不整脈効果」は認められず、むしろVFがある人ではVT/VFの発症リスクを高めるという結果になった。

■ 参考トピックス ■
◆ 2002.11.19 冠動脈疾患予防のためにω-3脂肪酸の摂取を、AHAが声明を発表

◆ WITTI
(Secondary Prevention Beyond Hospital Walls IntervenTion Trial In Women)

 AMIなどの冠動脈疾患で入院した女性304人を対象に、システマティックな介入の心疾患再発予防効果を調べた初めての無作為化比較試験。無作為に選んだ半数の患者に対して、退院時に1時間の患者教育を行い、退院後も定期的に本人に連絡を取るほか、患者の主治医(地元の家庭医)に対しても再発予防策を具体的に提示。血圧や血清脂質のコントロールが不良の場合は主治医に対してもファクスで加療を指示するなど、積極的な介入を行った。

 対象女性の半数はマイノリティー(黒人37%、ヒスパニック15%)で、4割が65歳以上の高齢者。7割は以前も冠動脈疾患を起こしたことがあり、4割に糖尿病、7割に高脂血症があった。目標とした二次予防策は、1.禁煙、2.運動、3.減量、4.血圧コントロール、5.血清脂質コントロール、6.アスピリンの服用、7.アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の服用、8.β遮断薬の服用−−の八つ。

 6カ月後に無介入群と介入群とで目標達成率を比較したところ、両群とも介入開始前よりは向上したものの、群間の差は認められないことが判明。研究グループは「今回行った程度の介入では不十分であることが判明した」と結論付けた。ただし、マイノリティー女性では、介入開始前の目標達成率が低いこともあり、介入の効果が現れやすいことが明らかになった。(内山郁子)

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