2003.11.10

【AHA2003速報】 H-FABS値がACS患者の予後とも相関、ACSの有力な診断・予後マーカーに

 藤田保健衛生大学循環器内科の石井潤一氏らは、急性心筋梗塞(AMI)の新たな診断マーカーとして注目を集めている心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)値が、急性冠症候群(ACS)発症6カ月以内の心イベント発生率とも相関していることを見出した。同様の診断・予後マーカーであるトロポニンT(TnT)値よりも、発症6時間以内なら診断能が優れることもわかったという。研究結果は、11月9日のポスターセッションで報告された。

 H-FABPは、細胞内での脂肪酸代謝に関与する、心筋特異的な蛋白。AMIにより心筋細胞が傷害されると、血中に逸脱して発症2〜3時間という早期から血中量が上昇するため、心筋傷害の有無を見分けるAMIの早期診断マーカーとして注目されている検査値だ。しかし、TnT値のように、患者の予後と相関があるかどうかはわかっていなかった。
 
 石井氏らは、発症6時間以内に同大学附属病院を受診した、連続341人のACS患者に対し、来院時にH-FABS値とTnT値を測定。6カ月後の心イベント発症率とH-FABS値との相関を調べた。患者の平均年齢は65歳、8割が男性で2割弱に心筋梗塞の既往があり、半数強が高血圧、3割が糖尿病、4割強が高脂血症を合併している。急性期治療として、84%に緊急冠動脈造影、59%に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施。その後6カ月で、AMIの再発や慢性心不全の発症などの心イベント(心疾患死含む)は16%に生じ、5.2%は心疾患で死亡した。来院時の血清H-FABP値の平均値は51ng/ml、血清TnT値の平均値は0.61ng/mlだった。

 H-FABP値で患者を4群に分けると、H-FABPが高値の群ほどPCIの実施率が高い、つまりAMIの比率が高いことが判明。心疾患による30日死亡率、6カ月死亡率や、30日、6カ月の心イベント率も、H-FABP値の上昇に伴い高くなり、来院時のH-FABP値で患者の予後をきれいに層別化できることがわかった。多変量解析からも、年齢やTnT値と並び、H-FABP値が予後因子であることが裏付けられた。

 また、AMIの診断基準には、血中クレアチニンキナーゼ(CK)の上昇を条件とする世界保健機関(WHO)基準と、CK上昇がなくてもTnTやトロポニンI(TnI)が上昇していればAMIとする欧州心臓学会(ESC)/米国心臓学会(ACC)の2基準がある(関連トピックス参照)。ESC/ACC基準の方がACS患者のより多くをAMIと診断することになるが、この基準を用いても、AMIの診断能はH-FABP値(診断閾値:6.2ng/ml、的中率:82%)の方がTnT値(診断閾値:0.03ng/ml、的中率:70%)より高くなることがわかった。

 石井氏は「今回の検討は発症6時間以内に来院した患者に限定されているが、このように発症早期の患者なら、H-FABP値の方がTnT値よりAMIの正診率が高い。TnT値と同様の予後予測能もあり、臨床的な有用性は高いのではないか。ただし、ACS患者では発症時刻がはっきりしないケースも多く、その場合はH-FABS検査とTnT検査を併用した方がいいだろう」と話している。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.9.7 ESC学会速報】非Q波心筋梗塞、CK陰性・トロポニン陽性例では従来例と転帰が異なることが判明

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