2003.11.08

高齢者高血圧、血圧管理が不十分でも実地医家は満足?−−J-HOME研究より

 東北大学臨床薬学教授の今井潤氏らが行った研究「J-HOME」(家庭血圧コントロール状況に関する全国調査研究)によると、実地医家の多くは、高齢者の血圧が海外のガイドラインでは高血圧とされる収縮期血圧140mmHgを超えていても、血圧のコントロールに満足している実態が明らかとなった。わが国の高血圧診療ガイドラインでは、60歳以上の患者の血圧は、忍容可能ならば140mmHg未満にすることが望ましいとしているが、患者の状態によってはもう少し高めでもやむを得ないことを規定していることから、その影響が及んだ結果とみられる。東北大学大学院医薬開発構想の大久保孝義氏が10月30日、第26回日本高血圧学会総会の一般演題「血圧測定・診断」で発表した。

 同研究では、降圧薬を服薬中で、家庭血圧測定可能な、無作為に選ばれた本態性高血圧患者3400人(平均年齢66歳)を対象に、わが国の高血圧診療における、家庭血圧・外来血圧の管理状況と、医師の治療成果に対する評価を調べた。参加者には家庭血圧を測定してもらい、主治医に対しては患者の既往歴や危険因子のほか、外来血圧、患者の血圧値に対する評価を「極めて良好」「まずまず良好」「不良」の三段階で評価してもらった。

 患者背景は、平均家庭血圧が140/82mmHg、平均外来血圧が143/81mmHg、体格指数(BMI)が24、治療期間30カ月、喫煙あり14%、糖尿病14%、高脂血症40%、高尿酸血症12%など。併用薬を含んだ服薬状況については、患者の70%がカルシウム拮抗薬、44%がアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬、17%がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、14%がα遮断薬、12%がβ遮断薬、9%が利尿薬を服用していた。

 大久保氏らは、患者の外来血圧値と家庭血圧値に基づき、患者を「高血圧群」「外来高血圧群」「家庭高血圧群」「正常血圧群」の4群に分けて評価した。内訳は、外来の収縮期血圧が140mmHg以上、家庭測定の収縮期血圧が135mmHg以上で、外来と家庭のいずれも血圧が高い「高血圧群」が全体の40%。外来血圧だけが高い「外来高血圧群」は16%、家庭血圧だけが高い「家庭高血圧群」は21%で、外来・家庭測定のいずれも高血圧ではない「正常血圧群」は23%だった。

 調査の結果、血圧管理が不十分であるにもかかわらず、主治医は患者の血圧コントロールに満足している実態が判明。正常血圧群の血圧管理については主治医の約90%が「まずまず良好」または「良好」と評価していたが、外来高血圧群、家庭高血圧群、高血圧群に対しても、半数以上の主治医が血圧管理は「まずまず良好」「良好」とみなしていた。

 「良好」「まずます良好」と回答した主治医の診ている患者について、外来収縮期血圧の降圧達成率を調べたところ、70〜79歳は140mmHg未満を満たしている人の割合は53%しかなかったが、「150mmHg未満」を基準にすると達成比率は82%になった。また、80歳以上は140mmHg未満、150mmHg未満を満たしている人の割合はそれぞれ43%、77%にとどまったが、「160mmHg未満」を基準にすれば96%に達していた。なお70歳未満は、140mmHg未満が61%、150mmHg未満が91%、160mmHg未満が97%と比較的高水準だった。

 この降圧目標達成率からは、多くの患者が、日本高血圧学会の高血圧診療ガイドライン(関連トピックス参照)に規定する、高齢者の降圧目標は達成していることが見て取れる。とはいえ、同高血圧診療ガイドラインでは、忍容可能ならば140mmHg未満にすることが望ましいとしている上、最近の臨床試験からは、高齢者においても血圧を下げるほど、冠動脈疾患発症などのリスクが低くなることが示されている。

 こうしたことから、大久保氏は「わが国の高齢者高血圧の降圧目標が高いために、多くの医者が『高齢者の血圧は高くてもよい』といった印象を受けているのではないか。来年にも改定される新しい高血圧診療ガイドラインでは、高齢者に対してもより厳密な降圧を求めていくべきだ」と指摘している。(星良孝、日経メディカル

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.11.5 日本高血圧学会速報】高齢者高血圧に年齢別の降圧目標は必要か? ガイドラインの改訂含みで議論−−DEBATEセッションより

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.11.5 日本高血圧学会速報】「家庭血圧による降圧目標値」設定目指す「HOMED-BP」研究が中間報告、“積極降圧”と“消極降圧”の実質降圧値に有意差なし

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