2003.11.02

【日本高血圧学会速報】 「家庭血圧による降圧目標値」設定目指す「HOMED-BP」研究が中間報告、“積極降圧”と“消極降圧”の実質降圧値に有意差なし

 2002年3月から本試験がスタートした、家庭血圧を用いる降圧薬比較試験「HOMED-BP」(Hypertension Objective Treatment based on Measurement by Electrical Devices of Blood Pressure Study)の中間解析結果が、11月1日のポスターセッションで報告された。カルシウム(Ca)拮抗薬への割付群で他薬への切り替えが少ないなど興味深いデータが明らかになる一方、今年9月末までの登録症例数が最終目標の3分の1に満たず、家庭血圧に降圧目標値の違いによる差が出ないなど、悩ましい現状も明らかになった。

 「HOMED-BP」研究は、東北大学大学院臨床薬学の今井潤氏らの呼びかけで始まった、研究者主導型の多施設共同研究。情報通信(IT)技術を使って遠隔地の医師でも参加できる形態を整えた上で、患者に血圧計を貸与、家庭血圧に基づく降圧治療を行う点が大きな特徴だ(関連トピックス参照)。2005年12月までに9000人の高血圧患者を登録、Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬のいずれかを第一選択薬とする治療群に割り付け、かつ2段階の降圧目標値を設定して、2012年まで追跡して予後を比較する。

 今回発表されたのは、2003年3月までに登録された患者1736人のうち、割付後6カ月以上追跡できた653人に対する中間解析結果。登録時の平均年齢は61歳、男女比はほぼ半々で、家庭血圧の平均値は151/90mmHgだった。こうした患者背景に、降圧目標値(高値目標群:125〜135/80〜85mmHg、低値目標群:125/80mmHg未満、いずれも家庭血圧)や割付薬による違いは認められず、無作為化がうまくいっていることが確認できた。

 降圧薬は指定量の投与で目標値まで血圧が下がらなかった場合、まず増量、次に少量の利尿薬が追加されるが、開始6カ月の時点で全体の6割に併用療法が行われていることがわかった。単剤投与(増量含む)で血圧がコントロールできていたのは、Ca拮抗薬群(239人)の31%、ACE阻害薬群(214人)の21%、A2受容体拮抗薬群(200人)の27%で、「Ca拮抗薬群では(副作用や降圧不十分などによる)他薬への切り替えが少なかった」と今井氏。逆にACE阻害薬では、「143人、つまり半数以上に咳やのどのイガイガ感が現れ、35人はA2受容体拮抗薬への切り替えが必要だった」と今井氏は話した。

 利尿薬との併用については、「興味深いことに、A2受容体拮抗薬と利尿薬という組み合わせが非常に有効だった」と今井氏は述べる。逆に、Ca拮抗薬と利尿薬の併用は、「案外血圧が下がらない」ことがわかったという。6カ月後の家庭血圧は3群間でほぼ変わらないが、収縮期血圧はACE阻害薬群、拡張期血圧はCa拮抗薬群で少し高い傾向がみられた。

 悩ましいのは、降圧の「高値目標群」と「低値目標群」とで、6カ月後の家庭血圧値に差がないこと。高値目標群の家庭血圧は135.3/80.7mmHgとほぼ目標通りだが、低値目標群では134.1/80.8mmHgと、ほとんど高値目標群と同じ水準に留まっているのだ。この試験では患者に、自分がどちらの降圧目標値群に割り付けられているのかを知らせているが、「現実には収縮期血圧が125mmHgを切ると『下がりすぎではないか』と患者さんが言ってくることが多い。また、血圧が降圧目標値に達していない場合、薬剤を増量・追加するよう主治医に指示が出るが、指示に従うかどうかは最終的には主治医の判断に任されている。どうやら医師・患者の両者に『高め』が良いという意識があるようだ」と今井氏は分析する。

 また、登録患者数は「今年9月末までに2500人に達した」(今井氏)ものの、目標の9000人には遠く及ばない。あと2年で目標登録数に到達するためには更なるペースアップが必要で、それには全国の医師・患者双方の協力が欠かせない。この研究に協力するメリットは「日本の高血圧診療におけるエビデンスを自らの手で作り出す」という一点に絞られることを考えると、いかに多くの医師そして患者の意欲を引き出せるかが、研究の成否を握る鍵となるだろう。

 「HOMED-BP」研究の詳細については、東北大学ホームページのこちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.10.29 日本高血圧学会速報】IT技術を活用した高血圧大規模臨床試験「HOMED-BP」、参加医師数が350人に

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