2003.11.01

【日本高血圧学会速報】 脈波伝播速度は高血圧性臓器障害の進展をどの程度予測し得るか? 「J-TOPP」研究スタート

 血管の“硬さ”を反映する指標として人間ドックなどでの普及が進みつつある「脈波伝播速度」(PWV)の、予後指標としての有用性を明らかにする臨床研究が始まった。全国の労災病院と東北地方の開業医が未治療の中高年高血圧患者800人を登録、降圧治療下で5年以上追跡する全国規模の多施設臨床試験で、PWV値の意義を縦断的に調べる大規模研究はこれが初めて。10月31日の一般演題「脈波」では、研究代表者の宗像正徳氏(東北労災病院勤労者予防医療センター)が、研究の背景とデザイン、進捗状況を報告した。

 この研究「J-TOPP」(Japanese Trial On Prognostic Implication of PWV)の目的は、高血圧性臓器障害を適切に予防する降圧治療の確立。患者登録は2002年5月から始まったが、今年10月現在、45施設から65人の医師が研究に参加し、総計500人弱の高血圧患者が登録されている。

 登録患者には初期治療薬(第一選択薬)として、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬、カルシウム(Ca)拮抗薬またはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のいずれかを、主治医の判断で処方。3カ月後に再度血圧を測定し、随時血圧が140/90mmHg未満(糖尿病・腎障害合併例は130/85mmHg)を目標に、必要に応じてまず利尿薬、さらにβ遮断薬などの交感神経系降圧薬を併用する。

 1次評価項目は尿中の微量アルブミン量。2次評価項目は心血管疾患の発症と総死亡で、各評価項目と上腕−足首間のPWV(baPWV)値との関連を調べる。「J-TOPP研究は、降圧治療に伴うbaPWV値の変化を、前向きに調べる初めての研究。降圧治療でどれくらい“血管”が良くなっているかがわかる指標は今のところ存在しないことを考えると、高血圧患者の動脈硬化早期治療のあり方に重要な情報をもたらす研究でもある」と宗像氏は意義を説明する。

 baPWVは頚動脈−大腿間のPWV(cfPWV)よりも簡便に測定できるが、cfPWV値が反映する伝播区間が大動脈部に限定されるのに対し、baPWV値の伝播区間は大動脈部+末梢。そのため、baPWV値には「原理的に弾性動脈の伸展性を反映し得ない」、平たく言えば「何を見ているかわからない」との批判があるが、宗像氏は「baPWV値とcfPWV値の相関は良好。もちろん、同じ臨床的な意義があるとは言えないが、長期的に評価することで独自の予後指標と成り得ると考えている」と話した。(内山郁子)

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