2003.10.31

【日本高血圧学会速報】 朝・夜の血圧比が高齢者の「要介護」推定に有用、前向き追跡研究が示唆

 75歳以上の後期高齢者461人を9年間追跡した地域コホート研究で、収縮期血圧(SBP)が高く、特に起床後の測定値が就寝前の1.1倍を上回る「朝昇圧タイプ」の人では、追跡期間中に要介護状態になる確率が高いことがわかった。一方、総死亡や心血管死亡と血圧とには関連が認められなかったという。後期高齢者では血圧コントロールが「疾患の予防・生命予後の改善」にはあまり効果がないが、「日常生活機能の維持」に有効であることを示唆するもので、高齢者対象の臨床研究の評価項目を考える上でも重視すべきデータとなりそうだ。研究結果は、10月30日の高得点演題セッションで、高知医科大学老年病科の西永正典氏らが報告した。

 西永氏らは、昨年の日本高血圧学会で、家庭で測定したSBPの平均値が138mmHgを超える後期高齢者では、9年後に要介護状態になっている人が有意に多いことを報告。今回は、起床後と就寝前に測定した血圧の比が、ADLや総死亡などの予測因子として役立つかどうかを検討した。

 対象は1992年に家庭血圧を連続して5日以上、起床後と就寝前に2回ずつ測定、機能検診を受けた後期高齢者461人。平均年齢は81歳で、男性が192人、女性が269人だった。西永氏らは、「SBPの全平均値」と「SBPの朝平均値・夜平均値の比」とで全体を4群に分け、2001年に再度機能検診を行って9年後の転帰に与える影響を評価した。

 正常血圧者(SBPの全平均値が138mmHg未満)と比べると、高血圧者は朝昇圧型(朝・夜比が1.1以上)、非朝昇圧型によらず1歳前後高齢で、朝昇圧型の人ではアップ・アンド・ゴー検査(椅子に座った状態から3メートル歩いて往復し、再び椅子に座るまでの時間を測定する)で評価した神経行動機能が劣っていた。一方、ミニメンタル試験で評価した認知機能や、基本的ADL判定基準(BADL:歩行、階段昇降、摂食、更衣、排泄、入浴、整容を各3点満点、計21点満点で評価し20点未満を「要介護」とする)で評価したADLも有意差はなく、性別や血清脂質、脳心疾患の既往にも有意差はなかった。ちなみに、MMSEは27〜28点、BADLは20点前後で、追跡開始時の「要介護」比率は提示されていない。

 西永氏らは最初に、高血圧の有無やパターンで生命予後を予測できるかを評価した。9年間の追跡期間中に125人が亡くなり、うち53人は脳心血管疾患による死亡だった。しかし、血圧と死亡率との関連を調べると、総死亡率に群間の差はなく、総死亡に占める脳心血管死の比率にも有意差はなかった。

 次に西永氏らは、生存していた336人のうち追跡終了時のADLが要介護の水準にある人の比率が、追跡開始時の高血圧の有無やパターンで予測できるかを検討した。追跡終了時には118人(35.1%)が要介護状態になっていたが、血圧が正常範囲の人と比べ、高血圧患者では、特に朝昇圧型の人で要介護状態の比率が高いことが判明。降圧薬の服用の有無や性別、アップ・アンド・ゴー検査のスコアと総コレステロール値で補正しても結果は変わらず、朝昇圧型の高血圧者では6.59倍(95%信頼区間:1.71〜25.34)、非朝昇圧型の高血圧者でも3.56倍(同:1.39〜9.13)、要介護状態になりやすいことがわかった。

 以上から西永氏らは、生存率と高血圧の有無、高血圧のパターンとは有意な相関がみられないが、高血圧は要介護の独立した危険因子で、なかでも朝昇圧型の高血圧患者では要介護状態になるリスクが特に高いと結論。家庭平均SBPとともに、「朝と夜のSBP比は、後期高齢者の機能予後の推定に有用」とまとめた。(内山郁子)

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