2003.10.31

【日本高血圧学会速報】 降圧薬の「降圧を超えた作用」を巡り議論−−DEBATEセッションより

 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の服用で、降圧量から予想されるよりはるかに大きなイベント抑制効果が認められた「HOPE」(Heart Outcomes Prevention Evaluation)試験の発表以来、降圧薬の「降圧効果を超えた作用」に注目が集まっている。10月30日のディベートセッション「Beyond blood pressure lowering効果の有無」では、二人の演者がそれぞれの立場から持論を繰り広げたが、論点は降圧外効果の「有無」から、降圧外効果を「どこまで重視するか」へと推移した。

 降圧外効果が「ある」という立場で登場したのは、東北大学分子欠陥病態学・腎高血圧内分泌内科の伊藤貞嘉氏。伊藤氏はまず、血圧が同程度にコントロールされていても、臓器保護作用に差がある実例として、伊藤氏は「RENAAL」(Reduction of Endpoints in Non-insulin-dependent Diabetes Mellitus With Angiotensin 2 Antagonist Losartan) 試験や「AASK」 (African American Study of Kidney Disease and Hypertension) 試験などを列挙。試験開始時と終了時の血圧がほぼ変わらなくても、降圧薬によって腎保護作用に差が出ることを示した。

 次に伊藤氏は、玄々堂君津病院の中尾尚之氏(現・名古屋市立大学臨床病態内科学)らが行った「COOPERATE」(Combination Treatment of Angiotensin 2 Receptor Blocker and Angiotensin-Converting-Enzyme Inhibitor in non-Diabetic Renal Disease)研究(Lancet;361,117,2003)を提示した。この試験では、全例で血圧が120/70mmHg程度にまでコントロールされていたが、それでも降圧薬により腎保護作用に差が付き、「血圧が十分に下げられている例でも降圧外効果がある」と伊藤氏は考察。さらに、多くの臨床試験で、降圧が同程度でも尿蛋白や左室肥大、糖尿病の新規発症などに差があることが示されていることを挙げ、腎臓以外でも「降圧薬の降圧外作用にはかなり強いエビデンスがあると言えるのでは」と述べた。

 一方の「降圧外作用はない」との立場で登壇したのは、これまで逆の立場で論陣を張ることが比較的多かった、自治医科大学循環器内科の島田和幸氏。島田氏は、降圧外作用への注目を集めることになった「HOPE」試験では、1回測定での血圧差は確かに3mmHgとわずかなものだったが、24時間測定では夜間血圧に大きな差があったことを示し、「『降圧外作用がある』ことを示した他の臨床試験でも、24時間の血圧測定結果が示されない限り、本当に『降圧は同等だった』とは言えない」と強調した。

 また、降圧外作用を示したとされる臨床試験でも、全心血管イベントの抑制率を縦軸に、比較群間の血圧差を横軸に取る、ベルギーLouven大学のJ. Staessen氏の有名なグラフ(J. Hypertens;21,1055,2003)に当てはめると、ほぼグラフ上に乗ることを提示。これは降圧薬の臨床効果の大部分が降圧の程度で説明できることを示すもので、「まずは厳格な降圧を行い、その上で病態に合わせた降圧薬の選択を行うのが本筋ではないか」と話した。

 両者の直接討議では、脳と腎臓、心臓のそれぞれについて、降圧薬の臓器保護効果が議論された。この段階で、論点は次第に降圧外効果の「有無」から「重要度」に推移。腎保護効果に関して「無し派」のはずの島田氏が「腎保護効果はあると思いますよ」と発言すると、会場は爆笑の渦につつまれ、「しかし降圧が大事だというのは文句がないところ」と切り返す一幕もみられた。(内山郁子)

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