2003.10.30

【日本高血圧学会速報】 降圧薬の第一選択、「使いやすさ」が鍵に−−DEBATEセッションより

 「ALLHAT」(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)研究(関連トピックス参照)の発表で降圧薬としての利尿薬再評価が進むなか、10月30日に開催されたディベートセッションでは、「第一選択薬 利尿薬かCa拮抗薬か」との主題で二人の演者が登壇。ALLHAT研究で強調された「効果」の同等性や「価格」よりも、むしろ副作用や将来の疾患発症リスクという、「使いやすさ」を前面に押し出した議論が展開された。

 第一選択薬を利尿薬とする立場で議論を展開したのは、済生会呉病院の松浦秀夫氏。松浦氏は冒頭、日本の降圧治療における利尿薬の処方頻度が7%と、英国の28%の4分の1であり、逆にカルシウム(Ca)拮抗薬は51%と英国(18%)の3倍近くになることを指摘。確かに脂質代謝や糖代謝への影響という観点ではCa拮抗薬の方が使いやすい面はあるが、「Ca拮抗薬を服用していれば糖尿病や低カリウム血症にならないわけではなく、いずれにせよ定期的なチェックは必要で、これがあるから一次選択薬に選ばないと言うほど大きな問題ではない」と述べた。

 さらに、ALLHAT研究では、利尿薬とCa拮抗薬には1次評価項目にまったく差がなく、2次評価項目でも脳卒中以外はむしろ利尿薬の方が優れる傾向があったことを提示。価格がCa拮抗薬より安い点もメリットの一つで、食塩感受性が高い日本人では、少量で緩徐な降圧が得られ、他薬との併用が可能な利尿薬をもっと使用すべきだと論じた。

 一方のCa拮抗薬支持派としては、慶応大学内科の熊谷裕生氏が登壇。ALLHAT研究以外の多くの大規模試験でCa拮抗薬の方が利尿薬より優れているとの結果が出ていることを提示し、松浦氏が認めている脳卒中や糖・脂質代謝以外にも、腎機能低下や痴呆発症の予防などの点で、Ca拮抗薬のメリットが示されているとした。

 ALLHAT研究でも、重大な副作用として利尿薬群の11.8%が4年後に糖尿病を発症した(単回測定で空腹時血糖が基準値より高かった)ことを指摘。この発症頻度はCa拮抗薬群の8.1%より有意に高いことから、「最近は患者もインターネットなどでよく勉強しており、『先生は明らかに糖尿病を増やす利尿薬を処方するのか』と言われる恐れもある」と述べ、「患者のことを心配する医師なら利尿薬は使わない方がいい」と話した。

 両者の直接討議では、「副作用に注意が必要なのは利尿薬だけではなく、Ca拮抗薬でも副作用として浮腫が生じる」と松浦氏が“使いやすさ”に疑念を投げかけると、熊谷氏は「身体所見をきちんととれば問題はない」と返答。熊谷氏の「糖尿病やカリウムについて患者から聞かれたらどうするのか。糖尿病の発症リスクがあることを知りながら、奥様やお母様にもあえて利尿薬を出すのか」との問いには、松浦氏は「Ca拮抗薬で糖尿病が発症しないという証明もなく、チェックが必要な点は同じ。大事なのは血圧が下がるかどうかで、エビデンスに基づく医療(EBM)はパーセントだけで論じるものではない」と返した。(内山郁子)
 
■ 関連トピックス ■
◆ 2002.12.18 「利尿薬はACE阻害薬、Ca拮抗薬に勝る」−−NHLBIが「ALLHAT」研究結果を発表

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