2003.10.29

カナダ医師会が高脂血症管理GLを改訂−−リスク評価法を米国のNCEPガイドラインに準拠、HPS研究の反映も

 カナダ医師会は10月28日、2003年版の高脂血症管理ガイドラインを発表した。2000年に発表したガイドラインの改訂版。改訂ガイドラインでは、リスク評価法に米国コレステロール教育プログラム(NCEP)ガイドラインと同一のものを採用。その上で、リスク分類を4段階から3段階へと簡略化し、管理目標値を引き下げた。さらに、昨年7月に論文発表された「HPS」(Heart Protecition Study)研究(関連トピックス参照)を反映し、ハイリスク者へのシンバスタチン(商品名:リポバスなど)投与を推奨した。

 今回改訂を行った主目的は、リスク分類やリスク評価法、管理目標値などをNCEPの脂質管理ガイドライン最新版(ATP3)に合わせることで、北米における高脂血症治療指針を統一(ハーモナイズ)すること。同時に、HPS研究など旧ガイドライン発表後に明らかになったエビデンスの評価・反映も行った。

 「患者の心血管発症リスクを個別に評価し、リスクに応じた脂質管理目標値を設定する」という管理指針そのものは、旧ガイドラインや米国のNCEP-ATP3、日本の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」(関連トピックス参照)と同じ。ただし、旧ガイドラインでは患者カテゴリーを4段階に分類していたが、改訂ガイドラインでは3段階へと簡略化、NCEP-ATP3と同一のリスク分類を採用した。

 このリスク分類は、Framingham心疾患研究(米国の代表的な地域コホート研究の一つ)のデータから算定した「心血管疾患10年予測発症率」に基づくもの。リスクを危険因子数で評価する日本のガイドラインとは異なり、年齢や収縮期血圧、そして性別(高齢男性と比べた場合の高齢女性の心血管疾患リスクの低さ)が厳密に反映されている評価法だ。具体的なリスク分類と管理目標値は次の通り。

◎高リスク
 心血管疾患の10年予測発症率が20%以上、または糖尿病・動脈硬化性疾患の既往
 ・LDL-C:2.5mmol/l(約100mg/dl)未満
 ・TC/HDL-C比:4.0未満
◎中等リスク
 心血管疾患の10年予測発症率が11〜19%
 ・LDL-C:3.5mmol/l(約140mg/dl)未満
 ・TC/HDL-C比:5.0未満
◎低リスク
 心血管疾患の10年予測発症率が10%以下
 ・LDL-C:4.5mmol/l(約180mg/dl)未満
 ・TC/HDL-C比:6.0未満

 管理目標値に低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値を用いた点はNCEP-ATP3と同じだが、もう一つの独自管理目標値として、「動脈硬化指数」と呼ばれる総コレステロール(TC)と高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値との比を採用した。LDL-Cの管理目標値は、旧ガイドライン(超高リスク:2.5mmol/l、高リスク:3.0mmol/l、中等リスク:4.0mmol/l、低リスク:5.0mmol/l)より0.5mmol/l(約20mg/dl)ずつ引き下げられているが、NCEP-ATP3の管理目標値(高リスク:100mg/dl、中等リスク:130mg/dl、低リスク:160mg/dl)よりは中等〜低リスク者で約10〜20mg/dl高く設定されている。

 なお、旧ガイドラインで提示していたトリグリセリド(中性脂肪)の管理目標値は、新ガイドラインには示されなかった。ガイドラインでは、その理由を、トリグリセリド値は動脈硬化指数に反映されるためと説明している。

心疾患予防目的のホルモン補充療法を禁止、高リスク者へのシンバスタチン投与を推奨

 改訂ガイドラインには、旧ガイドラインの発表後、新たに判明したエビデンスも反映されている。

 その一つが、閉経後女性に対するホルモン補充療法。昨年7月に一部が早期中断された「WHI」(Women's Health Initiative、関連トピックス参照)試験結果を反映し、閉経後女性に対し「心血管疾患の一次・二次予防を目的としたホルモン補充療法は行うべきでない」ことが明記された。

 もう一つは心血管疾患の高リスク者に対する治療方針。「HPS」研究の結果を反映し、高リスク者に対しては「シンバスタチン1日40mg投与と同等の治療(with the equivalent of 40mg/d of simvastatin)で、LDL-C値が2.5mmol/l(約100mg/dl)以下になるよう管理する」よう推奨された。ただし、HPS研究で示唆された“より厳格な脂質管理(LDl-C値が2.0mmol/l=約80mg/dl)”のメリットに関しては、「高リスク者にとって最適なLDL-C値にはまだ統一見解がない(controversy still exists)」とみており、現在進行中の大規模試験の結果が出るまでは現状の管理目標値を採用すべきと論じている。

 改訂ガイドラインのタイトルは、「Recommendations for the management of dyslipidemia and the prevention of cardiovascular disease: summary of the 2003 update」。現在、概要をこちらで閲読でき、ガイドラインの全文もダウンロードできる。NCEP-ATP3に関しては、米国心肺血液研究所(NHLBI)ホームページのこちらからガイドラインや関連情報を入手できる。日本のガイドラインは、日本動脈硬化学会ホームページのこちらで概要が公開されており、全文もダウンロードできる。(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.7.8 HPS研究が待望の論文化、米の高脂血症治療ガイドラインにも影響か
◆ 2002.7.25 日本動脈硬化学会、「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版」をHPで公開
◆ 2003.8.8 早期中断のホルモン補充療法試験「WHI」、最終結果がNEJM誌に掲載

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