2003.10.19

【DDW-Japan 2003速報】 早期大腸癌の内視鏡治療に「切開剥離法」、最大10cmの病変まで切除

 早期胃癌の内視鏡治療ではよく使われている「切開剥離法」を、胃よりはるかに壁が薄い大腸に適用する臨床研究が始まった。10月18日のワークショップ「EBMに基づいた早期消化器癌の内視鏡治療(腹腔鏡下手術を含む)指針と長期経過・予後の問題点」で、東京大学消化器内科の矢作直久氏らが、71例に対する臨床経験を報告した。陥凹型や平坦型、あるいは隆起型でも腫瘍径が大きいなど、スネア(先端が輪状になっている電気メス)を用いる内視鏡的粘膜切除術 (EMR)では摘除できなかった病変でも、9割は一括で切除できたという。一方で、それなりの穿孔リスクを伴うこともわかり、時間短縮に加え安全性の向上も課題となりそうだ。

 消化管腫瘍の内視鏡治療では、切除した病変の病理学的な評価が、その後の治療方針決定の上で欠かせない。断端が陽性の(腫瘍が取りきれていない)場合や、腺管・脈管侵襲がある場合などは、追加手術が必要になるためだ。病理学的な評価を正確に行うためには、病変を分割せず一括で切除することが大切になる。

 腫瘍が隆起しており、サイズが小さければ、粘膜下に生理的食塩液などを注入して腫瘍を浮かせてからスネアを引っ掛ければ一括で切除できる。しかし、病変サイズが大きい場合、スネアを使った一括切除は難しい。そこで登場したのがITナイフやフレックスナイフなどを用いる切開剥離法。腫瘍を浮かせてから周辺を切開し、フライ返しの要領でスネアを粘膜下に差し込んで腫瘍を剥離する。大きな病変を一括切除できる点が評価され、特に胃癌では実施件数が増えつつある。

 矢作氏らは、この切開剥離法を早期大腸癌に適用。隆起型でも大きい病変や、陥凹型や平坦型の病変、瘢痕やひきつれを伴うケースなど、従来のEMRでは一括切除が難しい病変に対し、切開剥離法を行って治療成績や合併症を評価した。対象患者の平均年齢は64歳で、病変サイズの平均は34.5mm(最大100mm)。

 その結果、71病変中64病変(90.1%)について、一括で切除することに成功。剥離部は通常のEMRと比べるとかなり大きな潰瘍になるわけだが、感染や遅発性の穿孔などは生じず、約2カ月で瘢痕化することが確認された。術中に出血したのは一例(1.4%)だけだった。

 しかし、術中の穿孔は6例(8.5%)と、かなりの頻度で生じたことも判明。4例には追加手術が必要になり、2例は癌の深達度が深かったことによるものだが、後の2例は剥離しきれなかったケースだった。治療時間は腫瘍のサイズにより異なり、3〜4cmなら1時間程度、5cm程度でも2時間以内に終わるのが標準的だが、12時間かかった例もあった。

 矢作氏らは、切除病変の病理学的評価が正確になることや、通常のEMRは適用できないが患者が手術を拒否したケースにも対応できることから、「大腸腫瘍でも切開剥離術は有用」と結論。しかし、発表後のディスカッションでは、「外科医からみると大腸の壁は(胃と比べて)ぺらぺらという印象で、それに切開剥離術を行うのはかなり挑戦的だ」(司会の大分医科大学第一外科・北野正剛氏)、「切開剥離術は上部消化管には有用だが、矢作先生ですら穿孔を起こすことを考えると、下部消化管への適用はもう少し待つべきでは」(旭川医科大学第3内科・斉藤裕輔氏)との意見が出された。矢作氏は「今回は初期の成績を報告したもので、これをたたき台に、より安全で治療時間の短い方法へと改良していきたい」と話した。(内山郁子)

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