2003.10.19

【DDW-Japan 2003速報】 高齢者の消化器疾患、無症状例が目立つ−−消化器内視鏡学会会長講演より

 10月17日の日本消化器内視鏡学会会長講演「高齢者の消化器疾患の診断と治療」には、日本大学第3内科の荒川泰行氏が登壇。逆流性食道炎(GERD)、胃癌、十二指腸潰瘍と大腸癌について、同大学附属3病院(板橋病院、駿河台病院、練馬光が丘病院)で1998〜2002年の5年間に行われた消化器内視鏡検査(上部:5万4000件、下部:2万3000件)のデータを分析した。荒川氏はこの豊富な分析結果を提示しつつ、高齢者に無症状例が多いなど、臨床病態や治療法の選択で非高齢者と大きな違いがあることを浮き彫りにした。

 まず、GERDは上部内視鏡施行総件数の6.4%にみられ、近年増加傾向にあることがわかった。65歳未満の非高齢者と65歳以上の高齢者とで頻度に差はなく、非高齢者、高齢者ともに4分の3は無症状だ。しかし、高齢者では非高齢者より重症例(ロサンゼルス分類のグレードC、D)が多く、高齢者の中でもより高齢になるほど重症例比率が増えることが判明した。食道裂孔ヘルニアの合併率も、高齢者の中では加齢と共に上昇した。胃粘膜萎縮は高齢者の方が高度だったが、ヘリコバクター・ピロリ菌(H.ピロリ菌)の感染率は11.1%と、GERDの非高齢者(30.8%)と比べても低かった。

 また、胃癌は上部内視鏡施行総件数の2.1%で発見された。非高齢者(1.3%)より高齢者(3.3%)で発見率が明らかに高い。発見癌に占める進行癌の割合は、非高齢者、高齢者ともに半数程度だが、高齢者では加齢と共に進行癌の割合が増え、85歳以上の超高齢者では4分の3が進行癌で見付かることがわかった。高齢者の早期胃癌、特に超高齢者では無症状例が多く、進行胃癌ではタール便を認めることが多いことも判明した。治療は年齢を反映してか、高齢者で内視鏡的粘膜切除術 (EMR)が行われる比率が高かった。

 次に荒川氏が挙げた十二指腸潰瘍は、高齢者よりも非高齢者に多い疾患。上部内視鏡施行総件数の7.6%で見付かったが、非高齢者(8.6%)より高齢者(6.0%)で発見率が低かった。非高齢者の45.2%、高齢者の58.1%が無症状だったが、胃癌と同様、高齢者では高齢になるほどタール便を認めたケースが増加した。ステロイドと非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は薬剤性潰瘍の2大原因だが、高齢者ではNSAID潰瘍の比率が高く、加齢に伴い上昇することもわかった。高齢者の場合、十二指腸潰瘍の時相は活動期が比較的多かったが、胃潰瘍を併存する場合、逆に瘢痕期が非高齢者より多いなど、病態を考える上で興味深いデータも得られた。

 最後の大腸癌は、下部内視鏡試行総件数の5.2%で見付かり、非高齢者(3.9%)より高齢者(7.5%)で明らかに多い。胃癌と同様、高齢者では進行癌として見付かることが多く、発見大腸癌の63%を占めた。発見時の主訴は無症状のことが多いが、加齢と共に有症状者が増加。早期大腸癌では加齢と共に下血・便通異常、進行大腸癌ではイレウス症状が増えることがわかった。部位別の分析では、早期癌・進行癌を問わず、高齢になるほど深部大腸(右側結腸)の発症頻度が高くなった。同病院では治療法の選択に年齢差は認められず、高齢者でも根治治療が積極的に行われていた。

 以上から荒川氏は「高齢者の消化器疾患は、非高齢者と比べ、臨床病態や治療法の選択など多くの点で異なることが明らかになった」と総括。急速な高齢化社会を迎えた今日、さらに詳細な検討を行い、「高齢者疾患の特徴を理解して日常診療に反映していくことが重要」とまとめた。(内山郁子)

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