2003.10.16

花粉症に効くヨーグルトや乳酸菌飲料が続々登場か  キリンやカルピスがヒトで効果を検証、学会で発表へ

 この冬は、花粉症対策の食品に注目が集まりそうだ。

 あと3〜4カ月で花粉症のシーズンに突入する。花粉症はくしゃみや鼻水、鼻詰まりといった症状が出るもので、いまや国民病といわれるほど多くの人が悩む。

 昨年、今年と、花粉症シーズンに話題になったのが、ヨーグルトや乳酸菌。シーズン到来前から多めに食べておけば体質を改善でき、花粉症の症状が軽くなるとみられてきた。

 乳酸菌による花粉症軽減効果の強さは、乳酸菌の種類や株によって異なる。数ある乳酸菌の中から、花粉症などのアレルギー症状を緩和する効果が高い株を選び出し、それをヒト試験で効果を検証する研究が盛んになってきた。

キリンは、KW乳酸菌の効果をダブルブラインドで確認

 10月23日から25日に岐阜市で開かれる日本アレルギー学会で、キリンビールの共同研究グループが、ヒト介入試験の成果を発表する。

 アレルギー改善作用が高いKW乳酸菌(学名:Lactobacillus paracasei KW3110株)で発酵させたヨーグルトを試作。今年1月から4月のスギ花粉飛散期に、花粉症に悩むボランティア28人の協力を得て、半数の14人にKW乳酸菌のヨーグルトを、残り14人に普通のヨーグルトを食べてもらい、ダブルブラインド(二重盲検法)で試験を実施した。

 1日200ml、100日近く連続摂取してもらったところ、普通のヨーグルトの摂取群に比べ、KW乳酸菌摂取群の方がアレルギー状態がより改善された。ダブルブラインドで差が認められただけに、効果は確実といえそうだ。

 花粉症の人は花粉の抗原刺激によって、全身免疫のTh1/Th2バランスはアレルギー悪化(Th1/Th2比は減少)の方に傾きがちになる。普通ヨーグルト摂取群ではTh1/Th2比が100日弱の間に有意に低下したが、KW乳酸菌ヨーグルト摂取群では有意な変化は認められなかった。アレルギー状態が悪化しなかった人も、普通ヨーグルト摂取群は14人中3例だったのに対し、KW乳酸菌ヨーグルト摂取群は14人中7例と、多くなった。

 キリングループはすでに、マウスから取り出した脾臓(ひぞう)細胞を培養する試験管内の実験や、マウスに摂取させる実験で、KW乳酸菌が他の乳酸菌に比べてアレルギー抑制作用が高いことを確認している。

 卵アレルギーの原因となる卵白アレルゲンを定期的に注射してTh1/Th2バランスをアレルギー状態に偏らせたマウスを作り、そこから取り出した脾臓細胞を1週間培養。Th1サイトカインであるインターロイキン12(IL12)やTh2サイトカインであるインターロイキン4(IL4)の培地への放出量を調べる実験を行った。

 市販のヨーグルトに含まれるプロバイオティクス乳酸菌を含む100種類以上の乳酸菌株の作用を比べたが、培養液に加えた乳酸菌がKW乳酸菌の場合が最も効果が高かった。IL12の増加作用、IL4の減少作用のいずれも、KW乳酸菌が最強だった。

 また、卵白アレルゲンを定期的に注射してアレルギー状態にしながら乳酸菌を毎日1mg、マウスに摂取させてアレルギーの進行状況を調べる実験でも、KW乳酸菌は高い効果を示した。

 アレルギーの進行の指標となる血中IgE濃度の上昇を抑制する効果は、2001年4月の英Lancet誌論文で、乳児のアトピー予防効果が証明されたことで有名なフィンランドValio社のLGG菌(日本ではタカナシ乳業がヨーグルトに実用化)よりも、KW乳酸菌の方が3倍以上強いとの結果が得られた。

 この一連の研究は、キリンビール基盤技術研究所がグループ会社の小岩井乳業の開発センター、昭和女子大学大学院生活機構研究科教授の飯野久和氏と共同で実施したもの。このKW乳酸菌を用いた製品は、まだ商品化されていない。できれば、あと2〜3カ月で始まる2004年のスギ花粉症シーズンに間に合うように商品化を急ぎたいところ。

 キリングループで健康食品の事業を担当するキリン・アスプロは現在、乳酸菌のサプリメントを商品化していない。事業戦略上、KW菌の早期の商品化もあり得る。

 また、キリングループでヨーグルト事業を担当している小岩井乳業は、KW菌のみで発酵した花粉症対策のヨーグルトの商品化を進めている。小岩井乳業は2003年の花粉症季節には、サントリーなどが抗アレルギー効果を確認している甜茶(てんちゃ)エキスを配合した「小岩井甜茶ヨーグルト」を2月から5月の季節限定で発売した。2004年はどのような商品戦略をとるかが注目される。

カルピス、L-92株の花粉症や通年性アレルギー鼻炎への効果を確認

 日本のヒト介入試験で花粉症に対する効果が確認された乳酸菌で、既に商品化されているものもある。その中で、カルピスが2003年1月に発売した発酵乳飲料「インターバランスL-92」は、最も入手しやすい製品だ。

 カルピス基盤技術研究所は、市販のヨーグルトに含まれる乳酸菌株などと比較して、最も効果が高い菌株としてLactobacillus acidophilus L-92株を選び出した。「インターバランスL-92」は1本100ml中に、このL-92株を330億個相当分、配合している。

 「インターバランスL-92」に比べると、菌数は数分の1程度と少ないが、2001年6月に発売した厚生労働省・許可「おなかの調子を良好に保つ」飲料である「カルピスキッズ」にもL-92株が配合されている(ただしこの商品では、CK-92株と表示)。

 カルピスは、花粉症のボランティア20人を対象に2003年1月から3月に実施したヒト介入試験で、L-92株を100億個含む発酵乳を毎日飲むと、花粉症の症状を改善できることを確認した。同社は、ダニやハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎の患者49人を対象に2002年12月から2003年2月に実施したヒト介入試験で、自覚症状などを改善できることも確認している。この成果は、2003年7月に神奈川県で開かれた日本乳酸菌学会で発表された。

 キリンとカルピスはそれぞれ、最も花粉症の緩和効果が高いと期待できる乳酸菌の菌株を、自社の研究で選び出した。個人の体質や体調も大きく影響するため、花粉症の症状をどの程度緩和するのか、乳酸菌の菌株毎にどの程度の違いがあるのか、明確な比較はできない。ただし、「プロバイオティクス」と表示してあるヨーグルトや乳酸菌飲料を飲食すれば、ある程度の効果を期待できそうだ。

 なお、乳酸菌はヨーグルトや乳酸菌飲料だけでなく、漬物や一部のチーズなどの発酵食にも多く含まれる。こうした乳酸菌発酵食や乳酸菌サプリメントの花粉症改善効果の研究成果も待たれるところだ。(河田孝雄)

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