2003.10.09

【日本骨粗鬆症学会速報】 超音波骨量測定は骨折ハイリスク者スクリーニングに有用、多施設追跡研究で判明

 かかとの骨の硬さをエコーで評価する「超音波骨量測定法」でも、X線を使う骨密度測定と同様に、将来の骨折リスクを判定できることがわかった。男女共に、今後5年間に骨折するリスクを50〜70%程度の正診率で判別でき、この骨折予知力は骨密度による骨折予知と差がなかったという。同学会「骨強度測定機器の評価と臨床応用に関する委員会」(委員長:川崎医科大学放射線医学・核医学教授・福永仁夫氏)が実施した前向き研究の結果で、10月9日の委員会報告で発表された。

 骨粗鬆症の診断に用いられる骨量測定装置は、X線で背骨や大腿骨の骨密度を測定する「X線方式」と、超音波で踵骨の強度を評価する「超音波方式」に大別できる。同委員会によると、現在わが国には3000台弱の超音波骨量測定装置が設置されており、うち4割強は米国GE Lunar社の「A-1000 Insight」、3割はアロカの「AOS-100」が占める。装置の3分の2は医療用途に、3分の1は検診などの保健活動に使われており、全体の6割は診療所に納入されているという。

 かかとを装置に乗せるだけで測定できる超音波方式は、簡便なうえ放射線被曝の恐れがなく、小児や妊婦にも使いやすい。しかし、X線方式で測定した「骨密度」が将来の骨折リスクを反映することが知られているのに対し、超音波方式で得られた測定値が、骨折リスクをどの程度反映するかを前向きに調べた研究はなかった。

 そこで同委員会は、委員が所属する5施設(放射線影響研究所、川崎医科大学、浜松医科大学、和歌山医科大学、大阪市立大学)で1993〜2000年に超音波方式による骨粗鬆症検診を受けた人に対し、2002〜2003年に質問票を郵送。検診後の骨折の有無や部位、身長、体重、閉経年齢を答えてもらった。回収数は4989人分で、検診から質問票回答までの平均追跡期間は5年。使用した超音波骨強度測定装置は、前3施設が「A-1000 Insight」、後2施設が「AOS-100」だった。

 回答者の平均年齢(検診受診時)は、男性(1200人)、女性(3789人)共に66歳。女性の8割は閉経後で、閉経年齢の平均は50歳だった。超音波による骨強度の測定値には、超音波伝播速度(SOS、骨幅を超音波透過時間で除したもの)、広帯域超音波減衰係数(BUA、超音波が骨を透過する際の減衰率を水と比較した係数)と、実際の骨強度判定でよく使用される「スティフネス」(換算式:0.67×BUA+0.28×SOS−420)を用いた。

 その結果、男性ではSOSとBUA、女性ではSOS、BUAとスティフネスの全てが、脊椎以外の部位の骨折リスクをよく反映することが判明。最も予測能が高かったのは大腿骨頸部骨折で、SOSが1標準偏差低下するごとに骨折リスクは2.8倍になり、BUAでは同様に1.9倍、スティフネスでは2.4倍になった。放射線影響研究所が行った骨密度による骨折リスク予測でも、1標準偏差低下によるリスク増加は1.5〜2.9倍となり、ほぼ変わらないことがわかった。

 このデータが示すのは、超音波方式による骨強度測定値は、X線方式で測定した骨密度と同程度に、将来の骨折リスクを予測し得るということ。ただし、超音波方式による測定値は骨密度との相関があまり良くなく、「骨密度のスクリーニングには使えない」と、報告を行った放射線影響研究所臨床研究部副部長の藤原佐枝子氏は釘を刺す。骨粗鬆症の診断というより「骨折高リスク群のスクリーニング機器として有用ではないか」(藤原氏)との考えだ。

 藤原氏は、現時点では骨粗鬆症検診の対象者が若年(婦人の健康づくり事業:18〜39歳)や中高年(老人保健法:40歳と50歳)の、比較的骨折リスクが低い女性になっている点を指摘。超音波方式では骨折高リスク群を効率良く拾い上げられることを考えると、超音波方式による検診は「骨折発生率が高い65歳以上の高齢女性を対象とし、高リスクと同定された人にはX線方式による骨密度測定を行うと同時に、転倒予防の指導やヒッププロテクターなどの骨折予防措置を行う方が良いのでは」と提言した。(内山郁子)

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