2003.10.08

骨髄幹細胞による自己血管の再生、イヌを使った動物実験で確認

 生分解性ポリマーを使った人工血管上に骨髄幹細胞を播種するという方法で作った「自己再生血管」が、抗凝固薬などを併用しないでも、最長2年間イヌに生着し、血管として機能することが確認された。東京女子医科大学の研究グループによる研究成果で、Circulation誌10月7日号に掲載された。研究グループは、この骨髄幹細胞による自己再生血管が「臨床試験入りする段階に来た(we can now extend its use to clinical trials)」としている。

 この研究を行ったのは、同大学附属日本心臓血圧研究所の松村剛毅氏ら。研究グループは既に、培養静脈細胞による自己再生血管の作製技術を確立、動物実験を経て臨床応用を行っている(関連トピックス参照)。数週間培養して数を増やした細胞を生分解性ポリマー製の管の上に播種し、体内に移植するという方法で、ポリマー部分は2カ月程度で生体内に吸収、後にほぼ完全な形態の血管が残ることが確認されている。しかし、培養液に他動物の血清を使うことから、未知の感染症リスクが残るなどの問題点も指摘されていた。

 そこで研究グループは、培養静脈細胞の代わりに、骨髄幹細胞を使う手法を検討。ビーグル犬16頭から骨髄幹細胞を採取、蛍光標識した後にポリマー管に播種して人工血管を作り、下大静脈に移植して、播種した骨髄幹細胞からどの程度血管が再生し、生着し得るかを調べた。

 その結果、移植8週後までにほぼ完全な形態の血管が再生することが確認。蛍光標識後に播種した骨髄幹細胞のほか、蛍光標識されていない、つまり血液中の骨髄由来細胞も、血管再生に寄与していることがわかった。再生血管内では内皮細胞だけでなく、平滑筋細胞のマーカーも確認された。16頭中1頭は2年間生存させて長期成績を評価したが、内皮細胞だけでなく平滑筋細胞や弾性線維なども備えたほぼ完全な血管へと再生しており、特に抗凝固薬などを投与していない条件下にも関わらず、閉塞は全く認められなかった。

 骨髄幹細胞は血液(血球系細胞)のほか、血管や骨など様々な組織に分化する高い可塑性を備えている。実際に、血管内皮への分化能を備えた血管内皮前駆細胞(EPC)(関連トピックス参照)が骨髄から血液中へと流れ出てくることも確認されているが、こうした骨髄由来細胞が、生分解性ポリマー管を“足場”に、生体内で実際に血管を再生し得ることが確認されたのは初めてだ。

 研究グループは、骨髄からは多量の細胞が採取できるため、体外で培養して細胞数を増やす必要がなく、培養に伴う未知の感染リスクを減らせると考察。さらに、骨髄幹細胞を使った自己再生血管なら、数時間で作製できるため緊急手術への対応も可能だとみており、臨床応用の正当性を支持する強力なエビデンスが得られたと結論付けている。

 この論文のタイトルは、「First Evidence That Bone Marrow Cells Contribute to the Construction of Tissue-Engineered Vascular Autografts In Vivo」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.3.26 日本循環器学会速報】組織工学で作った“自己再生血管”の臨床応用が昨年5月にスタート、既に3人に移植
◆ 2003.2.19 血中の血管内皮前駆細胞数が心血管疾患リスクと相関

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