2003.10.07

インスリン強化療法における体重増加、遺伝的背景も一因か−−DCCTサブ解析

 1型糖尿病患者に対するインスリン強化療法は、血糖コントロールを改善する半面、体重の増加が問題になることがあるが、この体重増加の一因には遺伝的背景もあるようだ。「DCCT」(Diabetes Control and Complications Trial)研究のサブ解析で、「2型糖尿病の家族歴」がある1型糖尿病患者がインスリン強化療法を受けた場合、家族歴がない人より体重増加が著しいことがわかった。研究結果は、Diabetes誌10月号に掲載された。

 「DCCT」研究は、1型糖尿病患者に対するインスリン強化療法の有用性を示した、糖尿病分野のランドマーク研究の一つ。同研究は、通常治療(インスリン1日1〜2回注射)より強化療法(1日4回以上注射、または皮下持続注入ポンプ=CSIIを使用)の方が、血糖コントロールが良くなり、合併症も減ることを明らかにした。

 ただし、インスリン強化療法群のおよそ4分の1では、体重が顕著に増加。インスリンの頻回投与で肥満になり、インスリン抵抗性が上がって必要インスリン量が増える、という悪循環に陥ってしまった。強化療法群では重症低血糖の頻度は高いが、摂取エネルギーそのものには通常治療群と差はない。特に小児の1型糖尿病患者の治療では、心理面からも体重増加を抑えることが重要で、体重増加につながる因子の解明が求められていた。

 米国Oregon健康科学大学内分泌部門のJonathan Q. Purnell氏らは、「太りやすい体質」の人が強化インスリン療法を受けると、体重増加へのトリガーがかかるのではないかと想定。欧米では肥満と密接な関連がある「2型糖尿病の家族歴」に着目し、DCCT研究参加者のデータを評価し直した。

 DCCT研究に参加した成人1型糖尿病患者1168人中、2型糖尿病の家族歴がある人は115人。家族歴保有者は通常治療群と強化療法群にほぼ均等に割り付けられていた。試験終了時の体格指数(BMI)は、通常治療群では家族歴の有無に左右されなかったが、強化療法群では2型糖尿病の家族歴がある人でBMIが有意に上回っていた。

 試験開始時と終了時のBMIの差をみると、通常治療群では、2型糖尿病の家族歴がない人とある人とでBMIの増加パターンにほとんど差がなかったのに対し、強化療法群では、2型糖尿病の家族歴がある人で独特なBMI増加パターンがあることが判明。強化療法群で家族歴がない人のBMI増加量が2前後に集中していたのに対し、家族歴がある人では3前後と8前後という2峰性の増加パターンを示した。

 一方、膵臓β細胞の自己抗原であるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)やインスリノーマ関連蛋白2(IA-2)に対する抗体の有無と、体重増加とには有意な関連が認められなかった。また、DCCT研究の最初の1年分のデータ解析で「体重増加と関連あり」とされた重症低血糖も、今回の全期間にわたる解析では体重増加との関連は否定された。

 研究グループは、2型糖尿病の家族歴がある人がインスリン強化療法を受けた場合、体重増加が単に増える(BMI増加量の分布グラフのピークが右にシフトする)だけでなく、顕著な体重増加を示す一群が存在する(分布グラフにもう一つピークが現れる)と指摘。強化療法における体重増加の一部はこうした遺伝的背景の存在で説明できると結論、2型糖尿病の家族歴を持つ1型糖尿病患者にインスリン強化療法を行う場合は、体重増加に特に気を付けるべきとしている。

 この論文のタイトルは、「Relationship of Family History of Type 2 Diabetes, Hypoglycemia, and Autoantibodies to Weight Gain and Lipids With Intensive and Conventional Therapy in the Diabetes Control and Complications Trial」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)


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