2003.10.06

女性の総死亡、フラミンガム・スコアとは独立に運動耐容能と相関−−WTH研究より

 健常女性5700人を8年半追跡した米のコホート研究で、年齢や血圧、血清脂質、糖尿病や喫煙習慣の有無など既存の心疾患危険因子を織り込んだ「フラミンガム危険因子スコア」で補正後も、試験開始時の運動耐容能から総死亡リスクを予測できることがわかった。主観的な指標である運動習慣と総死亡との関連を調べた研究は多いが、客観的な指標である運動耐容能と総死亡との関連を、女性を対象に調べた研究としては最大規模。研究結果は、Circulation誌9月30日号に掲載された。

 この研究「WTH」(the St. James Women Take Heart Project)を行ったのは、米国St. James病院とChicago大学の共同研究グループ。1992年に新聞広告などで「35歳以上で有症候性の冠動脈疾患がなく、妊娠しておらず、運動負荷試験を受けられる女性」を募集、集まった5721人に運動負荷試験を行って運動耐容能を評価した。その後、2000年まで追跡し、総死亡と登録時の運動耐容能との関連を調べた。

 研究に参加した女性の平均年齢は52歳、85%が白人で、体格指数(BMI)の平均値は27。45%に高血圧(140/90mmHg以上)、5%に糖尿病(随時血糖が200mg/dl以上)があり、15%が喫煙者だった。総コレステロール値の平均値は5.62mmol/l(約217mg/dl)、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の平均値は1.35mmol/l(約51mg/dl)。これらの心危険因子で評価したフラミンガム危険因子スコア(FRS、−17点から+25点で評価、高得点ほど心疾患リスクが高い)は平均6点だった。

 最大運動耐容能をMET(安静時酸素摂取量を1METとした時の運動時酸素摂取量)で評価すると、参加者の最大運動耐容能には1.5〜20.0METの幅があり、全員の平均値は8.0METとなった。追跡期間中に180人(3.2%)が死亡したが、亡くなった人の最大運動耐容能の平均値は6.2METで、生存者(8.0MET)より有意に低かった。

 ただし、追跡期間中の死亡者は生存者より平均年齢が10歳高く、高血圧や糖尿病の合併者が有意に多い。こうした点を反映して、FRSの平均スコアも3点高かった。そこで研究グループは、全体を最大運動耐容能で3グループに分け、FRSで補正した上で死亡リスクへの影響度を評価した。なお、最大運動耐容能とFRSとに有意な相関は認められない。

 その結果、FRS、つまり既存の心疾患危険因子で補正後も、運動耐容能が高い人ほど総死亡率が低くなることが判明。最大運動耐容能が8METを超える人を基準にすると、5〜8METの人の総死亡率は1.9倍(95%信頼区間:1.3〜2.9)、5MET未満の人では3.1倍(2.1〜4.8倍)になることがわかった。最大運動耐容能を連続量として扱うと、最大運動耐容能が1MET増加するごとに、総死亡率は17%低下する計算になった。

 狭心症など冠動脈疾患の症状がない女性を対象とした前向きコホート研究で、最大運動耐容能が高いほど総死亡リスクが有意に低いことが示唆されたのは初めて。1MET当たりの相対死亡リスク減少度(17%)は、男性対象研究で示唆された相対死亡リスク減少度(12%)より大きく、体力の生命予後予測能は女性の方が男性より大きい可能性もある。研究グループは、現在の米国心臓協会(AHA)ガイドラインでは無症状者に運動負荷試験を行うエビデンスは不十分としているが(関連トピックス参照)、総死亡リスクを評価する上で無症状者への運動負荷試験は有用ではないかと論じている。

 この論文のタイトルは、「Exercise Capacity and the Risk of Death in Women」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.10.8 ACCとAHA、運動負荷試験とACS患者管理に関する2ガイドラインの要約版を公開

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.5.21 高齢からの運動開始でも効果は大、総死亡率が48%減少
◆ 2003.9.26 日本癌学会速報】「体力の向上」が癌死亡の抑制因子に、職域コホート研究が示唆

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