2003.10.02

【再掲】【国際動脈硬化学会速報】 1回投与で1年半も治療効果継続、高LDL血症に対する遺伝子治療の新方式開発 

 1回の投与で1年半にわたって血清コレステロール値の低下を維持し、動脈硬化を抑制する遺伝子治療の新方式が開発された。まだ動物実験の段階であり、安全性の確認など臨床応用に向けた問題点の解決は必要だが、家族性高コレステロール血症に悩む患者にとっては朗報と言えそうだ。米Baylor大学医学部(当時、現広島大学医学部第1内科)の野村秀一氏(写真)が10月1日のポスターセッション「遺伝子治療」で発表した。

 家族性高コレステロール血症に対して、LDL受容体遺伝子を導入する治療の試み1990年代から臨床試験が実施されているが、初期世代の方式では、導入に用いるアデノウイルスのタンパク質も発現してしまうために免疫原性が生じ、投与後2週間程度で効果がなくなるという問題点があった。

 野村氏らのグループが作成したアデノウイルスベクターでは、最終的に得られるカプシドの中にアデノウイルスのタンパク質を発現するコード領域が含まれないので、抗体が産生されにくく、長期にわたって効果を持続できるのが大きな特徴だ。

 LDL受容体遺伝子を除去したマウスの遺伝子治療群と対照群に対して、20週間にわたって高コレステロール食を投与する実験を行ったところ、治療開始時点では550mg/dlだったコレステロール値は、対照群ではほぼ変化がなかったのに対して、治療群では高容量投与群、低容量投与群とも2週間で100前後に下がり、24週間後にもほぼ同じ水準を維持していた。24週後、これらのマウスの血管壁を調べたところ、対照群では、開始時点に傷害部面積の中央値が3mm2だったのに対して、17mm2と約5.5倍に増えていた。これに対して治療群では6mm2前後にとどまり、LDL低下による動脈硬化の予防効果が確認された。

 放射性ヨードで標識したLDLを負荷したところ、治療開始後4週間の時点で、対照群ではLDLの半減期が51分間だったのに対し、治療群では17分間と3倍の速度を示し、一過性の負荷に対してLDL受容体が機能していることが確認された。この成績は治療開始16週間後の時点でも、対照群の半減期が46分間だったのに対して、治療群では18分間と、ほぼ同水準を維持していた。

 一方、これとは別に長期間の治療成績を見る実験を行ったところ、治療開始時点では血清コレステロール濃度が約470mg/dlだったが、ベクター投与直後には約100まで低下した後、52週(1年)後の時点で平均199と対照群の半分、88週(約1年半)経過後でも平均269と、対照群に対し、コレステロール値は約4割低く、改善効果を維持していた。

 この方式の臨床応用について野村氏は、「前世代の遺伝子治療の臨床試験で1999年に死亡事故が発生しており、当面は動物実験を続けて十分に安全性を検討する必要がある」という。実際の治療の実現にはまだしばらく時間がかかりそうだ。一方、ウイルスタンパク質を含まないベクターを作成できるこの手法自体はLDL受容体導入以外の遺伝子治療にも応用可能であり、野村氏は別の遺伝子導入を近く試みる予定だとしていた。(中沢真也)

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