2003.09.28

【日本癌学会速報】 「継続」を目指す化学療法、進行・再発胃癌対象の無作為化第2相試験がスタート

 最大耐用量(MTD)ではなく、最大継続可能量(MRD;Maximum Repeatable Dose)を採用することで、腫瘍の増大を抑えつつ「長く続けられる」化学療法を目指す−−。こんなコンセプトに基づく化学療法の効果と安全性が、多施設共同の無作為化試験として検証されることになった。9月26日の一般口演では、金沢大学がん研究所腫瘍外科の高橋豊氏らが、この「テーラード・ドーズ・ケモセラピー」の概念を解説。がん集学的治療研究財団の助成でこの8月から始まった、進行・再発胃癌患者を対象とした第2相試験の概要を紹介した。

 癌に対する化学療法の効果(奏効率)は、腫瘍がどれだけ縮小したかで評価され、抗癌薬として承認される際の根拠にもなっている。一般に抗癌薬は、高用量を投与するほど腫瘍の縮小効果が高いが、骨髄抑制などの副作用も用量依存性に増える。そのため「患者が耐えられる最大量」であるMTDを求め、それを抗癌薬の投与量として設定するのが通例だ。

 化学療法では、抗癌薬を投与した後、数週間の休薬期間を置いて患者の回復を待ち、これを1コースとして「投薬−休薬」を繰り返す。しかし、MTD量の化学療法では、レジメン(抗癌薬の組み合わせ)にもよるが半数以上の患者にグレード3〜4の重い副作用が現れ、数コースで中断せざるを得ない。多くの場合、化学療法は「重い副作用に対応できるよう入院下で行い、数コース(数カ月)で中断するもの」になっていた。

 「テーラード・ドーズ・ケモセラピー」は、この「MTDに基づく化学療法」に対するアンチテーゼとして提唱された。「投薬−休薬」を1コースとする点は同じだが、副作用がグレード1〜2の範囲に収まる、つまり長く続けられる投与量(MRD)を患者一人ひとりに合わせて設定する。具体的には、MTDの半量から投与を開始し、強い副作用が出れば減量、出なければ増量するというルールで、医師の“さじ加減”を規定する。

 もちろん「副作用は出ないが効かない」のでは意味が無いが、高橋氏らが膵臓癌患者を対象に塩酸ゲムシタビン(商品名:ジェムザール)を用いて行ったパイロット試験では、従来よりはるかに少ない副作用で、同等以上の奏効率、生存期間が達成できたという。

 8月から患者登録が始まった臨床試験「JFMC31-0301」は、初めて化学療法を受ける進行・再発胃癌患者を対象に、こうした「一定のルール下でのさじ加減」の有効性と安全性を調べるもの。癌の進行度や分化度などで層別化した後に無作為に2群に割り付け、1.テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1、商品名:ティーエスワン)の単剤投与、2.S-1と塩酸イリノテカン(CPT-11、商品名:カンプト、トポテシン)の併用療法−−の2群間で奏効率などを比較する。

 初回の投与量は、CPT-11が体表面積1m2当たり1回75mg、S-1が単独・併用療法ともに体表面積に合わせ1回40〜60mg。2コース目以降は、有害事象のグレードに応じて投与量を増減する。1次評価項目は奏効率で、2次評価項目として奏効期間や生存率、無進行生存率(PFS)、生存期間の中央値(MST)や安全性を評価する。患者登録期間は2003年8月から2004年7月までで、両群合わせて90人の登録を予定しており、2006年7月まで追跡する。

 化学療法中の副作用がグレード1〜2の範囲内に収まっていれば、通院下での治療も可能になり、患者の生活の質(QOL)の向上や入院費の削減にもつながる。ただし、こうしたメリットも、従来法と遜色の無い治療効果が伴ってこそのもの。「医師のさじ加減」に対する科学的なエビデンスを提供する今回の試験で、どのような結果が得られるかに注目したい。

 「JFMC31-0301」試験の詳細は、同財団ホームページのこちらまで。(内山郁子)

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