2003.09.27

【日本癌学会速報】 EMR後のピロリ除菌、初の無作為化介入試験の中間解析で前向き結果

 早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術 (EMR)を受けた患者約540人を、無作為にヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ菌)除菌群と非除菌群とに割り付け、二次胃癌予防効果をみる臨床試験の中間解析結果が発表された。平均追跡期間が9カ月弱の段階で、発癌率に早くも差が認められたという。中間解析結果は、9月26日のシンポジウム「がん化学予防の理論と実践:基礎研究から介入試験まで」で、北海道大学第3内科の浅香正博氏(写真)が発表した。

 H.ピロリ菌が胃潰瘍を引き起こし、除菌すると治ることは、数々の介入試験で確認されている。また、呉共済病院受診者の長期前向き追跡試験や、地域コホートの久山町研究で、H.ピロリ菌に感染していない人は感染者よりも胃癌の発症率が低いことが示唆されている(NEJM;345,784,2001、Arch Intern Med;160,1962,2000)。しかし、既にH.ピロリ菌に感染している人が除菌療法を受けた場合、胃癌発症率が低くなるかについては明確な証拠がなく、国立がんセンターが無作為化介入試験を計画したものの頓挫してしまった。

 頓挫の最大の理由は、一次予防効果をみるために必要な、5000人という必要症例数を登録できなかったこと。この試験は結局中断され、より少数例で萎縮性胃炎の予防効果をみる試験のみが進められることとなった。

 しかし、二次予防効果の検証、つまり発癌率(再発率)が胃癌の既往がない人よりも高い「胃癌既往者」を対象とした試験なら、必要症例数はずっと少なくて済む。そこで浅香氏らは、早期胃癌のためEMRを受けたH.ピロリ菌陽性者を、除菌群と非除菌群に無作為に割り付ける多施設共同研究を行うことにした。

 この試験の根拠となったのは、呉共済病院の上村直美氏らが1997年に報告した少数例の前向き観察試験。EMR後に除菌療法を受けた65人と、受けなかった67人を3年間観察したところ、除菌療法を受けた人からは一人も胃癌の再発がなかったが、受けなかった人では6人(9%)が再発したというものだ(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev;6,639,1997。より長期の追跡結果も今年の日本ヘリコバクター学会で報告された)。

 さらに、浅香氏らが無作為化試験に先立って行った全国調査でも、EMR後に除菌を受けた群(356人、平均観察期間2.6年)の二次胃癌発症率は2.2%、除菌を受けなかった群(2469人、平均観察期間1.8年)は5.2%となった。つまり、「既に胃癌を発症した段階」からの除菌にも、癌予防効果が見込める可能性が示唆されたわけだ。

 今回中間解析結果が発表された無作為化試験への、2003年7月時点での登録者数は、除菌群が270人、非除菌群が269人。平均年齢は約68歳、男女比はほぼ3対1で、中間解析時点での平均観察期間は9カ月弱だ。そして、二次胃癌は除菌群の二人(0.7%)、非除菌群の9人(3.3%)に認められた。

 除菌群と非除菌群の二次胃癌発症率に、早くも3倍以上の差がみられた形で、「この分なら2年間で決着が付くかもしれない」と浅香氏。注意すべきなのは、まだ観察期間が短いうえ発癌者が両群を合わせても11人と少なく、結果が正反対にひっくり返る恐れもあるということ。また、EMRで摘除できるサイズ・浸潤度の早期癌患者が対象であることも留意しなければならない。とはいえ、「除菌療法による癌予防」を支持するエビデンスとなりそうなデータであることは確かで、今後に期待が持てそうだ。(内山郁子)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. ガイドラインにはない認知症の薬物療法のコツ プライマリケア医のための認知症診療講座 FBシェア数:77
  2. 膿のニオイをかぐのはNG? 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:2
  3. インフルエンザの早い流行で浮かぶ5つの懸念 リポート◎AH3先行、低年齢でAH1pdmも、外来での重症化… FBシェア数:244
  4. 医療事故調制度の「目的外使用」が続々明らかに ニュース追跡◎制度開始から1年、現場の理解はいまだ不十分 FBシェア数:35
  5. 救クリが研修先として適切か検証してみた 木川英の「救急クリニック24時」 FBシェア数:1
  6. 45歳男性。胸痛、冷汗 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  7. ニボルマブ薬価50%下げは厚労省判断だった 医療行政の舞台裏◎実は「官邸に押し切られた」のではなく… FBシェア数:1
  8. 医師国家試験を解答するAIの正体教えます トレンド◎人工知能が医療現場にやってくる FBシェア数:221
  9. 腸管アンモニア産生菌に対する肝性脳症治療薬 最新DIピックアップ FBシェア数:8
  10. 「肩や上腕のひどい疼痛」で見逃せない疾患は? 山中克郎の「八ヶ岳から吹く風」 FBシェア数:1