2003.09.26

【日本癌学会速報】 「体力の向上」が癌死亡の抑制因子に、職域コホート研究が示唆

 成人男性8000人を17年間追跡した大規模職域コホート研究で、追跡開始前に2回行われた体力テストで体力の向上が認められた群では、体力が低いままだった群よりも、癌死亡のリスクが低くなる傾向があることがわかった。「低い体力」が癌死亡の危険因子であることは既に報告されているが、「体力の変化」が予後因子であることが示唆されたのは初めて。研究結果は、東京ガス健康開発センターの澤田享氏が、9月25日の一般口演で発表した。

 澤田氏は、1970年代、1980年代の2回、健康診断で運動負荷試験を受けた同社の会社員男性8000人を、2回目の運動負荷試験から平均17年追跡。1回目(1978〜1980年に実施)と2回目(1982〜1988年)の間の体力の変化が、その後の癌死亡リスクにどのような影響を与えるかを評価した。対象者の年齢幅は20〜59歳で平均35歳、追跡期間中の総死亡は198人、癌死亡は106人だった。

 「体力」の指標として、澤田氏は最大酸素摂取量(VO2max)を採用。年齢から求める推定最大心拍数の85%を目標に、自転車エルゴメーターで2〜3段階の負荷を掛け、推定式に従って各人のVO2maxを算出した。このVO2maxの高低で全体を5グループに分け、最も低い群を「低体力群」(2回目測定時で1665人)、低い方から2、3番目を「中体力群」(3480人)、高い方から1、2番目を「高体力群」(2855人)とした。

 各群の背景因子で有意に差があったのは、年齢(順に平均42歳、37歳、33歳)、収縮期血圧(順に平均127mmHg、125mmHg、123mmHg)と喫煙率(順に61%、64%、66%)。つまり、体力が低い人はより高齢で血圧が高く、喫煙率が低かった。また、体格指数(BMI)は体力が低い人ほど高い傾向があったが、飲酒率は変わらなかった。

 次に澤田氏は、年齢、BMI、収縮期血圧、飲酒・喫煙量で補正して、体力の変化が癌死亡に与える相対危険度を評価した。すると、2回の体力テストでいずれも「低体力群」になった人で最も癌死亡リスクが高かった。このリスクを基準にした場合、1回目は「低体力群」だったが2回目は「中体力群」または「高体力群」に入った人では相対リスクが0.6と、有意ではないが(95%信頼区間:0.3〜1.2)低下する傾向があることが判明。逆に、1回目は「中・高体力群」だったが2回目は「低体力群」に下がった人では、癌死亡の相対リスクは1.0(同:0.6〜1.9)と、体力が低いままだった人と変わらなかった。

 なお、1回目、2回目ともに体力が「中体力群」または「高体力群」に分類された人では、2回とも「低体力群」だった人よりも癌死亡リスクは有意に低く、相対リスクは0.5だった(同:0.3〜0.9)。

 澤田氏は、体力(有酸素能力)が低いままである、あるいは低下することは、癌死亡の独立した危険因子であると結論。中程度または高い体力を維持する、あるいは体力を向上させることで、癌死亡の予防に寄与し得る可能性があるとした。

 ちなみに、高齢女性を対象に運動習慣と総死亡との関連をみた同様のコホート研究では、2回目の評価時に身体活動性が向上した人で、身体活動性が低いままだった人より、有意に総死亡や癌死亡が低いことが報告されている(関連トピックス参照)。今回のデータも「運動で体力が向上すれば癌死亡の相対リスクが下がる」と解釈したいところだが、興味深いことに「運動習慣に関する簡単なアンケートも同時に行ったが、体力の変化と運動習慣とに十分な相関はみられなかった」と澤田氏。フロアからは「有酸素能力は運動習慣ではなく、むしろ遺伝的な心肺機能を反映しているのでは」との指摘があったが、癌死亡に経時的な変化との関連が認められた点を鑑みると、心肺機能の(遺伝的な)「維持能力」と癌死亡に相関があると考えるべきかもしれない。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.5.21 高齢からの運動開始でも効果は大、総死亡率が48%減少

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