2003.09.25

【日本癌学会速報】 「くまのい」がC型肝硬変からの発癌を抑制か、症例対照研究が示唆

 日本で古くから使われてきた利胆薬の「くまのい」(熊の胆)に、C型肝炎ウイルス(HCV)感染による肝硬変からの発癌を予防する効果があるかもしれない−−。くまのいの主成分であるウルソデオキシコール酸(UDCA;わが国での商品名:ウルソなど)の服用者と非服用者を長期追跡した症例対照研究で、肝臓癌の5年発症率に3倍近い差があることが確認された。大腸癌予防に関するプラセボ対照第3相試験ではネガティブな結果となったUDCAだが(関連トピックス参照)、肝臓癌予防では一転、期待の持てる結果となった。研究結果は、9月25日のポスターセッションで、神奈川県立がんセンター消化器内科の多羅尾和郎氏らが報告した。

 対象は、1989〜1997年に同センターおよび熊本大学第3内科に入院し、肝生検で肝硬変であることが確認されたHCV感染者のうち、5年以上経過を観察できた102人。治療にはグリチルリチン製剤の「強力ネオミノファーゲンシー」や漢方薬の小柴胡湯(現在は肝硬変には禁忌)、UDCAなどを用いたが、多羅尾氏らは治療薬にUDCAを用いた患者(56人)と用いなかった患者(46人)に分けて肝臓癌の発生状況を比較した。なお、インターフェロン療法は、当時は肝硬変患者に対する保険適応がなかったため行われていない。

 患者の平均年齢は約60歳、男女比はほぼ半々で、肝硬変の重症度は全員がChild分類のA。こうした患者背景に両群で大きな違いはなく、アルブミン値やプロトロンビン時間、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT、GPTとも)値など肝機能を反映する検査値、治療薬の使用頻度などにも有意差はなかった。

 5年後の肝臓癌発症率を比較したところ、UDCA治療を受けた56人では10人(18%)が肝臓癌を発症したのに対し、UDCA治療を受けなかった46人では18人(39%)が発癌したことが判明。単変量解析では「UDCA未治療」のほか「ALT高値の持続(80IU/l以上が4年以上)」「男性」「高齢(66歳以上)」も肝臓癌発症の危険因子として浮上したが、これらの因子を用いて多変量解析で補正すると、UDCA治療により肝臓癌の発症がほぼ3分の1になることがわかった(未治療のオッズ比:3.03、95%信頼区間:1.14〜8.05)。

 発癌率の経年変化(累積発癌率)をみると、3年目までは両群でほぼ変わらず、4年目以降に差が開く。一方、ALT値の経年変化は両群ともほぼ同程度低下しており、「UDCAの肝臓癌発癌抑制効果は抗炎症効果によるものではないようだ」と多羅尾氏は推測する。もちろん介入試験で確認する必要はあるが、大腸癌では否定された「胆汁酸仮説」が、C型肝硬変からの発癌では成り立つ可能性が出てきたと言える。

 昨年の癌治療学会では、トマトから抽出した複合カロテンにB、C型肝硬変からの発癌予防効果があることを示した介入試験結果が発表されたが(関連トピックス参照)、今回示唆された発癌抑制効果はほぼ複合カロテン並みで、しかもUDCAには慢性肝疾患への適応がある。「肝硬変患者全員にインターフェロンが使えるわけではない上、インターフェロン療法でHCVを排除できない患者もいる。そのような人にUDCAの投与は考慮に値するのでは」と多羅尾氏は話している。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆2003.6.6 ASCO速報】「くまのい」に大腸癌予防効果なし、第3相試験で胆汁酸仮説実証されず
◆ 2002.10.21 日本癌治療学会速報】複合カロテンが肝硬変からの発癌を抑制、発癌率が無介入群のほぼ3分の1に

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