2003.09.22

【体力医学会速報】 筋トレの継続は動脈硬化を悪化させる?

 近年、筋力トレーニングは高齢者の転倒予防や日常生活動作の改善、肥満解消など、多くの点で有益性が報告されている。しかし、循環器疾患の危険因子のひとつである頸動脈のコンプライアンス(血管内皮の柔軟性)や血管内皮の肥厚度を測定したところ、継続的な筋トレを長期間継続している中年者では、これらの指標が有意に悪化しているというショッキングな事実が明らかになった。研究結果は9月21日午前のポスターセッション「呼吸、循環」で報告された。

 川崎医療福祉大学の宮地元彦氏らの研究グループは、筋力トレーニングを2年以上にわたって定期的に続けている若年者15人と中年者14人、持久的トレーニングを定期的に実施している若年者15人と中年者15人、運動習慣を持たない若年者17人と中年者16人の6グループ計92人について、動脈硬化指標である頸動脈のコンプライアンスと内膜中膜複合肥厚度(IMT)を測定した。

 その結果、運動習慣がない中年者のグループでは、頸動脈コンプライアンスの値が約0.15mm2/mmHgだったのに対し、筋トレ群では約0.11mm2/mmHgと有意に低下していた。持久的運動群では逆に約0.17 mm2/mmHgと有意に高かった。また、IMT/血管径比では、非運動群と持久的運動群がともに0.08前後だったのに対して、筋トレ群では0.10弱と有意に厚く、中年者の筋トレ群では、非運動群、持久的運動群に比べ、血管内皮の厚みが増し、しかも柔軟性が失われていることが明らかになった。若年群でも同様の傾向が見られたが、中年群ほどの格差は見られなかった。

 筋トレ群で頸動脈コンプライアンス低下やIMT増加が見られることは、先行研究で明らかになっているが、加齢によってその傾向が増大することを示したのは初めてだという。筋トレ群における頸動脈コンプライアンスと左心室肥大には有意な負の相関関係があることも今回新たに明らかになった。

 筋トレが循環器系に不利な変化をもたらすメカニズムについては、本研究では明らかにされていないが、宮地氏らは、トレーニングの運動パターン(力の入れ方など)に対する動脈の適応の違いが関与している可能性を示唆している。

 ただし、今回の報告で対象としたのは、競技者に近い高強度のトレーニングを続けている群であり、一般市民を対象に運動教室やスポーツクラブで行われる低強度の筋トレについての報告ではない。筋トレの利点を享受しながら循環器系への悪影響を避けるためには、年齢とともに負荷を下げていく、循環器系への好影響が確認されているジョギングなどの持久的運動と組み合わせるといった対策を講じた方がよさそうだ。宮地氏らの研究グループでも、こうしたトレーニングの複合化による影響の研究を既に着手しているという。(中沢真也)

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