2003.09.22

PTHによる骨粗鬆症の治療、ビスホスホネート製剤との「相乗効果」なし−−2臨床試験が米で学会発表

 骨代謝回転を早める副甲状腺ホルモン(PTH)製剤に、骨吸収を抑制するビスホスホネート製剤を組み合わせても、骨量の増加などに対する“相乗効果”は認められないことがわかった。9月20日に米国骨代謝学会(American Society for Bone and Mineral Research)で発表された、二つの無作為化二重盲検試験の結果による。原著論文はNew England Journal of Medicine(NEJM)誌9月25日号に掲載される予定で、学会発表と同時に同誌ホームページ上で早期公開された。

 PTHは骨代謝を司るホルモンで、古い骨を壊し(骨吸収)、新しい骨を作る(骨形成)という骨代謝回転を早める作用を持つ。PTH製剤を間歇的に投与すると、このバランスが骨形成側に傾いて骨量が増え、骨折の予防につながることがわかり、PTH製剤は「骨形成作用を持つ初の骨粗鬆症治療薬」として欧米で承認された(関連トピックス参照)。

 ビスホスホネート製剤など既存の骨粗鬆症治療薬は逆に、骨吸収を抑制することで、骨量を結果的に増やす作用を持つ。PTH製剤にビスホスホネート製剤を組み合わせれば、理論的にはより効果的に骨量を増加できると考えられ、両剤の「併用療法」への期待が高まっていた。

 発表された研究の一つは閉経後女性(238人)、もう一つは男性(83人)を対象としたもの。両試験とも患者を無作為に3群に分け、1.PTH製剤単独(1日1回皮下注射)、2.ビスホスホネート製剤単独(1日1回朝服用)、3.PTH製剤・ビスホスホネート製剤の併用−−の3群間で各部位の骨量の増加度などを比較した。追跡期間は、閉経後女性対象の「PaTH」(Parathyroid Hormone and Alendronate)試験は1年(中間解析)、男性対象試験は30カ月。

 PTH製剤には欧米で市販されているテリパラタイド(PTH1-34)ではなく、完全長のPTH(PTH1-84、米国NPS Pharmaceuticals社製)を使用。ビスホスホネート製剤には、アレンドロネートの経口剤(わが国での商品名:フォサマック、ボナロン)を用いた。

 その結果、海綿骨に富む脊椎の骨密度は、両試験ともPTH製剤の単独投与群が最も増加。皮質骨に富む大腿骨頚部の骨密度も、観察期間が長い男性対象試験では他2群より有意に増加した。閉経後女性対象の「PaTH」試験では、PTH単独投与群で大腿骨頚部の骨密度は減少したが、男性対象試験でも最初の2年はPTH単独投与群での骨量増加率が低いことから、閉経後女性試験による大腿骨頚部骨密度減少は「(観察期間が短いことによる)一過性の現象では」と両論文に対する論説は記している。

 さらに、骨代謝マーカーによる解析では、PTH製剤単独群では骨吸収、骨形成のいずれも亢進、ビスホスホネート製剤単独群では骨吸収が抑制されていた。そして、PTH製剤とビスホスホネート製剤を併用した群では、骨吸収は抑制されているが骨形成の亢進作用は認められなかった。

 今回発表された2研究が示すのは、PTH製剤の「骨代謝回転を早める作用」を、骨吸収を抑えるビスホスホネート製剤が打ち消してしまうこと。結果として、PTH製剤にビスホスホネート製剤を組み合わせても、意味のある「追加効果」は得られないわけだ。併用療法が“理論通りには行かない”ことを、この2研究は浮き彫りにしたと言える。

 なお、「PaTH」試験は2年間の試験で、後半の1年間はPTH製剤を中止し、アレンドロネート(元の併用群)またはプラセボ(元のPTH単独群)を服用して、PTH製剤で増えた骨量をビスホスホネート製剤が維持できるかを評価する。PTH1-34製剤の連用が制限されている現状を鑑みると、ビスホスホネート製剤による「維持療法」の成否にも注目が集まりそうだ。

 閉経後女性を対象とした「PaTH」試験の原著論文のタイトルは、「The Effects of Parathyroid Hormone and Alendronate Alone or in Combination in Postmenopausal Osteoporosis」。アブストラクトは、こちらまで。男性対象試験の論文タイトルは、「The Effects of Parathyroid Hormone, Alendronate, or Both in Men with Osteoporosis」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.6.25 組換え副甲状腺ホルモン注射薬が米国に続き欧州でも承認

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