2003.09.19

冠動脈疾患の二次予防に「クラミジア除菌療法」は無効−−WIZARD試験より

 クラミジア(Chlamydia pneumoniae)感染歴がある心筋梗塞既往者約8000人を対象とした、クラミジア除菌療法に関する過去最大規模の臨床試験「WIZARD」(Weekly Intervention with Zithromax for Atherosclerosis and its Related Diorders)の最終結果が、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌9月17日号に掲載された。最長4年、中央値で14カ月追跡したが、1次評価項目(総死亡+非致死性再虚血+再灌流療法の施行+狭心症による入院)に有意差は認められず、「冠動脈疾患患者に対する抗菌薬投与を正当化(justification)するには、将来の臨床試験結果を待たなければならない」と研究グループは総括している。

 「WIZARD」試験は、いわゆるクラミジア仮説の実証のために行われた数々の臨床試験の一つ。試験薬には、クラミジアに対する除菌効果があり、抗炎症作用も併せ持つマクロライド系のアジスロマイシン(わが国での商品名:ジスロマック)を用いた。2002年3月の米国心臓学会(ACC)で発表された予備的な結果(関連トピックス参照)では、1次評価項目に有意差が認められておらず、最終結果が待たれていた。

 試験の対象は、心筋梗塞の既往があり(発症から6週間以上経過)、血中のクラミジア抗体価が高い(1:16以上)、成人患者7747人。無作為に2群に割り付け、プラセボまたはアジスロマイシンを12週間投与した(文末の「お詫び」をご覧下さい)。薬剤の投与法は、第1週に実薬またはプラセボを3日間投与、第2〜12週は週1日投与するというもの。実薬の1日量は600mgとした。

 対象患者の平均年齢は62歳、8割が男性で9割が白人。半数に狭心症、1割強に心不全があり、最後に心筋梗塞を起こしてから中央値で2.6年経過していた。主な併用薬はアスピリンが9割、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が4割、スタチン系薬が7割、β遮断薬が6割、カルシウム拮抗薬が2割強。

 総計1038イベントが起こるまで追跡したところ、1次評価項目への到達率はプラセボ群(3868人)が年率8.02%となり、アジスロマイシン群(3879人)ではプラセボ群より相対的に7%低いものの、有意な差はないことが判明(p=0.23)。年齢や総コレステロール値などの危険因子で補正しても結果は変わらなかった。ACC学会で報告された通り、最初の6カ月では実薬群でイベント予防効果が高い傾向が認められたが、その傾向は長期的には保持されなかった。

 興味深いのはクラミジア抗体価別の解析で、試験開始時の抗体価と治療効果とに関連がみられないだけでなく、抗体価とイベント発症率とにも関連が認められなかった。「抗体価が高い人ほど心イベントを起こしやすい」わけではないということで、仮にクラミジアが動脈硬化性疾患の発症や増悪に関与しているとしても、その“活動度”を抗体価では測れないことを示唆するデータだ。

 また、サブグループ解析では、「男性」「喫煙者」「糖尿病合併者」そして「高脂血症合併者」で、クラミジア除菌によるイベント抑制効果が高い傾向が認められた。プラークがより不安定な急性冠症候群(ACS)患者を対象とした、より小規模の「CLARIFY」(Clarithromycin in Acute Coronary Syndrome Patients in Finland)試験(関連トピックス参照)では比較的長期のイベント抑制効果が認められている点を鑑みると、今回検討されていない「狭心症の有無」や「スタチン服用の有無」に関するサブグループ解析結果も知りたいところだ。

 なお、クラミジア除菌療法に関しては、抗菌薬の投与期間がより長い「ACES」(Azithromycin and Coronary Events Study)試験と「PROVE IT」(Pravastatin or Atorvastatin Evaluation and Infection Therapy)試験(除菌にはガチフロキサシンを使用)試験が進行中。研究グループは、「WIZARD」試験では抗菌薬の投与期間が短すぎた、あるいは患者の選定が適切でなかった可能性もあるとして、最終的な結論を出すにはこれらの試験結果を待つべきと論じている。

 この論文のタイトルは、「Azithromycin for the Secondary Prevention of Coronary Heart Disease Events」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.3.19 再掲】ACC '02速報】心房細動の治療戦略やクラミジア除菌の位置付けが明確化−−LBCT 1より
◆ 2002.4.9 ACS患者の心事故予防に抗菌薬はやはり効く? 「3カ月投与」で心事故発生率が4割低下

■ お詫び ■
 上記の2記事で、「WIZARD」研究におけるアジスロマイシンの投与期間を2週間と報じましたが、12週間の誤りでした。お詫びして訂正いたします。(三和護、MedWave編集長)

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