2003.09.19

オフィスワーカーの3人に一人がドライアイ−−初の大規模疫学調査結果まとまる

 日ごろパソコン端末(VDT)に向かって仕事をしているオフィスワーカーを対象に、眼科医がドライアイの有病率や病型を調べた、初めての大規模疫学調査結果が発表された。日本眼科医会の「IT眼症と環境因子」研究班(班長:京都府立医科大学眼科教授・木下茂氏)が取りまとめたもの。ドライアイはVDT作業従事者の3人に一人と有病率が高いうえ、「眼の乾き、涙、充血」が3大症状であることもわかり、「このような症状がある人は、自己診断で済ませず、ぜひ眼科を受診して欲しい」と研究班は呼びかけている。調査結果は、9月18日に都内で開催された日本眼科医会の記者会見で発表された。

 この調査の特徴は、職場におけるVDT検診の受診者を対象に「涙の質・量」と「角膜の傷」を眼科医が検査して、ドライアイか否かの診断を行っていること。調査結果を発表した京都府立医科大学眼科助教授の横井則彦氏(写真)は「これまでに(有病率が高いと予想される)病院受診者を対象とした調査や、自覚症状のみの聴取による調査はあったが、眼科医が職場を訪問して行った調査は世界的にも例がない」と話す。

 研究班はまず、2000年11月から2001年8月にかけて、職場のVDT検診を受診したVDT作業従事者1025人を対象に、コンタクトレンズの装用状態やVDT作業時間、眼症状などを聴取。その後、「涙液の質的・量的異常」と「角膜上皮障害」の有無を調べてドライアイを診断した。

 涙液の異常を調べる検査としては、シルマー検査(ろ紙を白目と下まぶたの間に5分間はさんで涙液量を調べる)と涙液層破壊時間測定(BUT;涙をフルオレセインで着色し、乾燥までの時間を測定する)を実施。いずれか一つに異常があれば「涙液の質・量に異常あり」とした。ドライアイとの診断は、涙液の質・量異常と角膜上皮障害の両者があれば「確定」、いずれか一方は「疑い」とした。調査対象者の平均年齢は36歳で、男性が542人、女性が483人。

 その結果、1025人中320人(31.2%)は、片目あるいは両目がドライアイ(確定例)であることが判明。449人(43.8%)は片目あるいは両目にドライアイの疑いがあり、両目ともドライアイではなかった人は256人(25.0%)しかいなかった。ドライアイと確定診断された人では、「目が赤い、目が充血している」「目が乾いた感じがする」「涙が出る」との訴えが有意に多かった。ドライアイはコンタクトレンズの装用者に多かったが、コンタクトレンズの種類(ソフトまたはハード)による違いは認められなかった。男女別では女性に多かった。

 また、ドライアイには涙の量が減ることで起こる「涙液減少型」と、涙の質が変化して乾きやすくなることで起こる「蒸発亢進型」があるが、VDT作業従事者のドライアイでは圧倒的に後者が多いことがわかった。ドライアイとの診断が確定した眼では、涙の量は十分なのに、眼の乾きが異常に早いタイプが85%を占めた。

「マイボーム腺の機能不全」も危険因子に

 “眼の乾きを防ぐ機能の低下”も、ドライアイの発症に関与しているのでは−−。そう考えた研究班は、2001年11月から2002年2月にかけて第2次調査を実施。前回調査の調査事項に加え、「マイボーム腺の機能」を調べる検査を追加して、マイボーム腺から分泌される脂質の質と量をスコア化、ドライアイの有病率との関連を評価した。

 マイボーム腺は、上下のまぶたの中に存在する油脂分泌腺。分泌された油脂が眼の表面に油層を形成、涙の乾きを防いだり、涙の表面を平滑に保って涙が流れ出ないようにすることで眼の乾燥を防ぐ効果がある。検査では、両目の上まぶたを3カ所ずつ計6カ所圧迫し、マイボーム腺から分泌される脂質の量と粘調度を計測した。調査対象者数は189人で平均年齢は36歳、男性が97人、女性が92人だった。

 すると、マイボーム腺からの脂質の粘調度にはドライアイか否かで差は認められなかったが、脂質の量はドライアイの人で有意に少ないことが判明。脂質の量に異常があった人では、ドライアイの有病率が有意に高い(48.8%対34.4%)ことも確かめられた。

 ただし、マイボーム腺の機能異常があった人の比率に男女差は認められなかった。「マイボーム腺の機能は男性ホルモン依存性と考えられており、第2次調査は“女性にドライアイが多いのはマイボーム腺機能不全が多いためでは”との仮定の基に行ったが、今回の調査では実証できなかった」と横井氏。女性ではコンタクトレンズの装用率が高い(第一次調査では男性の16%、女性の43%がコンタクトレンズを装用)ことを鑑みると、「コンタクトレンズの装用」が交絡因子になっている可能性もあり、「その点についても検討を進めたい」と横井氏は述べた。(内山郁子)

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