2003.09.17

中国製ダイエット食品による健康被害、原著論文が米国内科学会誌に掲載

 未承認医薬品成分の混入などにより大きな健康被害をもたらした、いわゆる中国製ダイエット食品による健康被害症例が、論文という形で全世界に情報発信された。慶応大学消化器内科の足立雅之氏、石井裕正氏らがとりまとめたもの。同氏らが昨年7月に報告した最初の12人に関する詳細な症例報告が、米国内科学会(ACP)の学術誌であるAnnals of Internal Medicine誌9月16日号に掲載された。

 この健康被害は、「御芝堂減肥こう嚢」や「せん之素こう嚢」、「茶素減肥」などの、中国製ダイエット用健康食品を服用した人に発生した肝障害(「せん」は糸千=いとへんに千、「こう」は月交=にくづきに交)。足立氏らの報告を受け、厚生労働省はこれら健康食品の成分分析を実施。米国で1997年に使用が禁止されたダイエット成分、フェンフルラミンの誘導体であるN-ニトロソフェンフルラミンが混入していることが判明、後にこれが肝障害の原因である可能性が高いことが突き止められている(関連トピックス参照)。

 今回発表された論文は、厚生労働省による迅速な被害拡大阻止策へとつながった、最初の12人に関するもの。うち6人は2002年4月から6月にかけて慶応大学附属病院に入院した事例で、後の6人は日本各地からの事例だ。12人中6人は「御芝堂減肥こう嚢」、6人は「茶素減肥」を服用していた。

 12人の内訳は男性二人、女性10人で、年齢は25〜63歳。服用から5〜50日で疲労感、食欲減退などの症状が出始め、症状発生から8〜30日で医療機関を受診していた。受診時には全員が急性肝障害を発症しており、11人が入院。うち二人は劇症肝炎を起こしており、一人は肝移植で救命されたがもう一人は死亡した。ピーク時のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT、GPTとも)値は平均1978U/lだった。

 注視すべきなのは、受診時にアレルギー症状を呈していた患者が一人もおらず、薬剤アレルギーを調べるリンパ球刺激試験でも12人中8人が陰性だったことだ。仮にこの時点で「健康食品とは無関係かもしれない」、あるいは「もう少し症例が集まるまで待とう」との判断が下されていたら、厚生労働省による注意喚起が遅れ、被害はさらに拡大したかもしれない。因果関係の科学的な裏付けを急ぐ前に、因果関係が疑われる事例を収集、速やかに報告した姿勢は高く評価されるべきだろう。

 なお、これらの中国製ダイエット用健康食品による健康被害は、最新集計である8月27日現在で総計910人(うちN-ニトロソフェンフルラミン含有食品では671人)に生じており、4人が死亡している。今年に入ってからの新規報告事例はほとんどなく、商品名の公表など、被害の拡大を防ぐ手立てがうまく機能した格好だ。

 8月29日に一部施行された改正食品衛生法では、食品による健康被害が生じた場合、一般に飲食に供されることがなかった物を含む「可能性がある」との段階で販売禁止措置を取れることとなった。今回の事例が一つの契機となった法改正だが、健康被害の発生が前提となる以上、今まで以上に医療従事者による「疑い例」報告への期待が高まっていると言えそうだ。

 この論文のタイトルは、「Hepatic Injury in 12 Patients Taking the Herbal Weight Loss Aids Chaso or Onshido」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。中国産ダイエット用健康食品による健康被害に関する厚生労働省の発表資料は、同省ホームページのこちらに集積されている。改正食品衛生法に関しては、厚生労働省ホームページの「食品安全情報」まで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.2.17 N-ニトロソフェンフルラミンがいわゆるダイエット用食品による肝障害の原因物質

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