2003.09.16

全世界の「年間たばこ死」は483万人、心筋梗塞、肺気腫と肺癌が死因のトップスリーに

 全世界で毎年483万人がたばこのために早死にしており、うち8割の384万人は男性−−。こんな試算が米豪の共同研究として取りまとめられた。死因のトップスリーは、心筋梗塞などの心血管疾患(169万人)、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(97万人)と肺癌(85万人)。30歳以上の成人の場合、男性は5人に一人、女性は20人に一人がたばこで命を落とす計算になるという。研究結果は、Lancet誌9月13日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、米国Harvard大学のMajid Ezzati氏と、オーストラリアQueensland大学のAlan D. Lopez氏。両氏は、世界保健機関(WHO)の2000年版「Global Burden of Disease」(GBD、全世界における疾病負担の計測と将来予測を行う研究)に基づき、地域区分別にたばこによる早死(premature death)率を算出し、先進国と発展途上国に分けて30歳以上の成人の総死亡に与えるたばこの影響度を評価した。

 研究のユニークな点は、各地域における喫煙者と非喫煙者の肺癌死亡率の比から「喫煙影響比」(smoking impact ratio;SIR)を求め、それを肺癌以外も含めたたばこ死亡数の算出に組み込んだこと。中国農村部など換気の悪い室内で調理を行う地域では、喫煙の相対的な影響が少なくなるためだ。SIRは各地域データを対照値で補正して算出したが、この対照値には米国対癌協会(ACR)が1982年から実施している前向き追跡研究「CPS-2」(Cancer Prevention Study, phase 2)のデータを用いた。なお、大気汚染など室内調理以外の影響に関しては、推測値に幅を持たせる(uncertainty)形で対応した。

 その結果、全世界における2000年の30歳以上総人口26億6900万人のうち、年間483万人(不確定範囲:394万〜593万人)が、たばこのために寿命よりも早く死亡しているとみなせることが判明。推定たばこ死亡者数は、発展途上国(30歳以上総人口:18億7400万人)で241万人、先進国(同:7億9500万人)で243万人となり、比率は先進国で高いものの総数はほぼ同程度となった。

 死因のトップは心血管疾患で、年間169万人がたばこにより死亡。総心血管疾患死に占めるたばこ死の割合は、先進国の若年(30〜69歳)男性では40%に達する計算になった。総数としては心血管疾患より少ないものの、第二位のCOPD(97万人)、第三位の肺癌(85万人)ではたばこの影響がより大きく、先進国の若年男性では順に84%、91%が「たばこ死」であると見積もられた。

 また、総死亡に対するたばこの影響に大きな地域差があることも、今回の研究から判明した。たばこ死は男性(70歳以上の高齢者も含む)総死亡の19%、女性(同)総死亡の5%を占めるが、先進国の若年男性ではこれが33%、先進国の若年女性では12%と高くなる。一方、発展途上国の若年男性では総死亡の14%、若年女性では3%が「たばこ死」と見積もられ、現段階では先進国より低い水準であることがわかった。

 なお、日本はWHOの地域区分で「西太平洋地区A」(WPR-A、西太平洋地区のうち新生児死亡率、総死亡率がいずれも極めて低い地区)となる。この地域には日本のほかオーストラリア、ブルネイ、ニュージーランドとシンガポールが含まれているが、総死亡に占めるたばこ死の割合は、男性が22%、女性で10%と算出された。つまり、日本を含む地区では、男性の5人に一人、女性の10人に一人がたばこで死んでいる計算になる。

 研究グループは、特に発展途上国では生活環境の改善(SIRの上昇)と喫煙率の上昇があいまって、今後「たばこ死」が激増する恐れがあると考察。男性の喫煙率を減らし、女性の喫煙率上昇を抑制する政策を実行すべきと論じている。

 この論文のタイトルは、「Estimates of global mortality attributable to smoking in 2000」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

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