2003.09.16

高齢者のインフルエンザ治療で費用効果分析、ワクチン接種者には検査+抗ウイルス薬、未接種者には抗ウイルス薬の直接投与を

 インフルエンザ流行期に来院した高齢者がインフルエンザ様症状を呈している場合、まずワクチンの接種歴を問診し、未接種者には検査を行わずに抗インフルエンザウイルス薬を直接投与すべき−−。米国で行われた費用効果分析から、このような「実践的な戦略」が導かれた。分析は数々の臨床研究データに基づくもので、今回提示された“経験的投与”戦略には一考の価値がありそうだ。研究結果は、Annals of Interenal Medicine誌9月2日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、米国Baystate医療センターのMichael B. Rothberg氏ら。Rothberg氏らは、若年者では「労働損失の減少」という観点から、抗インフルエンザウイルス薬治療が費用効果に優れるとの検討結果が出されているが、高齢者に対する費用効果分析が行われていない点に着目。「入院・死亡の減少」を評価軸とした費用効果分析を行った。

 主な前提条件は、1.インフルエンザ流行期に急な高熱と咳で来院した高齢者がインフルエンザ感染症である確率は35%、2.インフルエンザの原因ウイルスがB型である確率は11%、3.インフルエンザで入院した高齢者の死亡率は10%、4.インフルエンザ迅速検査薬の感度は73%、特異度は96%、5.インフルエンザワクチンは高齢者のインフルエンザ発症を58%、入院を32%、死亡を50%減らす−−というものだ。

 インフルエンザにかかった高齢者の入院率は、1.高リスク者:心疾患または肺疾患の合併者:23.5%、2.中等リスク者:糖尿病、腎疾患、リウマチ、痴呆の合併者、脳卒中の既往者:9.8%、3.低リスク者:これらの疾患に罹患していない高齢者:4.4%−−と仮定した。これらの数値は、種々の疫学研究や臨床研究に基づいて提示されている。

 抗ウイルス薬としては、1.A型ウイルスのみに有効な薬(アマンタジン、リマンタジン)、2.A、B両者に有効な薬(オセルタミビル、ザナミビル)−−の2種4薬について検討。罹病期間の短縮効果は同等だが副作用は後者で少なく、抗菌薬投与も少なくて済むとの前提条件を導入した。後者の2薬に関しては、吸入外用薬のザナミビルの方が副作用は少ないが、経口内服薬のオセルタミビルの方が正しく服薬できるとのデータを導入して比較した。

 その結果、特に合併症がなく入院リスクが低い高齢者の場合、ワクチン既接種者にはまず検査を行って陽性ならオセルタミビルを投与、ワクチン未接種者には検査を行わず全員にオセルタミビルを投与するとの戦略が、最も費用効果に優れることが判明。一方、糖尿病患者など入院リスクが中等度の場合や、心肺合併症がある高リスク者の場合は、ワクチン接種の有無によらず、検査を省いて全員にオセルタミビルを投与する戦略が最も費用効果的に優れるとの結果になった。

 注意すべきなのは、この研究があくまで「費用効果」分析であること。医療費が異なる地域では、当然、最適となる戦略も変わってくる。前提となった医療費は米国のもので、薬剤費は日本とほとんど変わらないが、診察費用はほぼ倍、入院費用(平均5.4日と仮定)も4082ドル(約48万円)と日本の数倍になる。迅速検査による“見落とし”の、費用的な打撃は日本では少なくなるだろう。こうした点を考慮した、日本の実情に合った費用効果分析に期待したい。

 この論文のタイトルは、「Management of Influenza in Adults Older than 65 Years of Age: Cost-Effectiveness of Rapid Testing and Antiviral Therapy」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.6.24 日本老年医学会速報】高齢者施設でのインフルエンザ対策、ワクチンに加え抗インフルエンザ薬の早期服用が効果的

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