2003.09.11

【日本心臓病学会速報】 睡眠時の呼吸障害がプラークの不安定化に関与か、安定狭心症患者との比較研究が示唆

 急性冠症候群(ACS)患者と安定狭心症患者との比較研究で、ACS患者では、睡眠中の酸素飽和度低下指数(4%ODI)が安定狭心症患者のほぼ2倍になることが明らかになった。閉塞性の睡眠時無呼吸症候群(OSA)患者では炎症マーカーの上昇(関連トピックス参照)や易血栓性の亢進がみられることが報告されており、それもOSA患者の脳心疾患の多さに関与していると考えられているが、逆にACS患者でOSAなどの睡眠呼吸障害(SDB)が多いことがわかったのは初めて。神奈川県立循環器呼吸器病センターの福井和樹氏らによる研究で、9月10日の一般口演で報告された。

 福井氏らは、ACSにおける冠動脈プラークの不安定化には炎症や易血栓性が密接に関わっており、睡眠時の呼吸障害がある患者では炎症や易血栓性が亢進していると報告されているが、ACS患者の睡眠時呼吸障害に関する検討は行われていないことに着目。同センターで冠動脈造影検査を受けたACS患者と安定労作性狭心症(EAP)患者とで、睡眠中の酸素飽和度(SaO2)を測定し、4%ODI(睡眠中にSaO2が4%以上低下した1時間当たりの回数)と病態とにどのような関連があるかを評価した。

 解析対象は、2001年6月から2002年12月までに冠動脈造影検査を受けた、ACS患者71人とEAP患者54人。ACS患者の内訳は、急性心筋梗塞(AMI)が39人、不安定狭心症(Braunwald分類の3b)が32人。睡眠中のSaO2は検査入院中(AMI患者は退院直前)に測定した。

 ACS患者の平均年齢は66歳、EAP患者は68歳で、両群とも約4分の3が男性。患者背景には左室駆出率(LVEF)とスタチン系薬の服薬率を除き有意差はなく、7割が高血圧、半数が高脂血症、2割が糖尿病を合併しており、半数強が喫煙者で3割が肥満だった。LVEFはACS群が65%、EAP群が71%とACS群で有意に低いが、大半が正常範囲。スタチン系薬の服薬率はACS群が13%、EAP群が30%でEAP群で有意に多かった。

 睡眠中の4%ODIは、ACS群が平均6.5回と、EAP群の3.3回を有意に上回ることが判明。多変量解析を行ったところ、SDB(4%ODIが5回以上、オッズ比3.59)とスタチン系薬内服(オッズ比0.18)が、独立したACSの予測因子であることがわかった。SDBの重症度別分析では、SDBが重症の人(4%ODIが10回以上)で、冠動脈疾患患者全体に占めるACS患者の割合が有意に多くなることも明らかになった。なお、SDB合併者の一部について呼吸障害の病型を調べたところ、大半は閉塞型だったという。

 福井氏らは4月の日本循環器学会で、冠動脈の有意狭窄と軽症SDBとの間に相関があることを報告しており、「SDBでみられる夜間の一過性低酸素症は、軽度では動脈硬化を促進し、重度の場合はプラークの不安定化を亢進するのではないか」と考察。こうした一過性低酸素血症がACS発症の引き金になると考えると、持続陽圧呼吸器(CPAP)治療などでACSの発症を抑制できる可能性があると述べた。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.5.30 睡眠時無呼吸患者で炎症マーカーCRP値が上昇、重症度と相関

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