2003.09.11

【日本心臓病学会速報】 AMI後の抑うつ、重症度とは無関係にセロトニン関連遺伝子多型が規定

 急性心筋梗塞(AMI)後に抑うつ状態になると予後が悪いことが知られているが、この抑うつ状態に対し、セロトニン関連遺伝子の多型が独立した規定因子の一つになっていることがわかった。意外なことに心筋梗塞の重症度とは関連がみられず、「重症者ほどうつになりやすい」わけではないことも判明したという。日本人では95%以上がこの“AMI後に抑うつ状態になりやすい遺伝子型”を持っていることもわかり、日本人AMI患者には「こうした遺伝的背景を考慮したアプローチが必要なのでは」と研究グループはみている。研究結果は、9月10日の一般口演で報告された。

 この研究を行ったのは、大阪大学大学院病態情報内科学講座の中谷大作氏ら。大阪大学など25施設が参加する「大阪急性冠症候群研究会」(OACIS、関連トピックス参照)の登録患者を対象に解析を行った。

 解析対象は、1999年4月から2003年3月末までにOACISに登録されたAMI生存退院患者のうち、セロトニントランスポーター(5-HTT)のプロモーター領域多型(関連トピックス参照)の解析が可能で、かつ発症3カ月以内の安定期に抑うつ気分判定テスト(SDSテスト、全20問で20〜80点、40点以上が「抑うつ気分あり」)を受けた1230人。約4分の3が男性で、平均年齢は63.6歳だった。

 解析対象者における5-HTTのプロモーター領域多型の比率は、s/s型が777人(63%)、l/s型が403人(33%)で、欧米人の3割、インド人の4割を占めるl/l型はわずか50人(4%)。男女比や年齢、梗塞部位や重症度、糖尿病などの冠危険因子、服薬状況、独居の有無などに多型による違いはなかった。SDSスコアはl/l型で有意に低く、「抑うつ気分あり」と判定された人の比率もl/l型(30.0%)でs/s型、l/s型(いずれも48.6%)より有意に少なかった。

 次に研究グループは、多変量解析で抑うつ気分の発症に対する独立した規定因子を検索した。すると、女性、糖尿病、喫煙、独居と並び、「s型遺伝子を一つまたは二つ持つ(Sアレル)」ことも有意にAMI後の抑うつ気分発症と関与していることが判明した。一方、Killip分類やクレアチンホスホキナーゼ(CPK)値で評価した心筋梗塞の重症度は、抑うつ気分発症との相関が認められなかった。

 以上から中谷氏らは「生存退院したAMI患者では、5-HTTのトランスポーター多型のSアレルは抑うつ気分発症の独立した規定因子」と結論。Sアレル保有者では有意にAMI後の心イベント発症率が高いとの予備的な結果も出ており、「AMI後の心イベント再発を防ぐためのアプローチとして、こうしたメンタル面からのサポートも重要ではないか」と中谷氏は話している。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.4.1 日本循環器学会速報】AMIの長期生命予後が発症後の禁煙で改善、前向き追跡研究で示唆
◆ 2003.7.22 セロトニン関連遺伝子の多型がうつ病への“なりやすさ”を左右

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.9.2 SSRIに抗血小板作用か、「SADHART」サブ研究が示唆

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