2003.09.09

【短期集中講座◇心肺蘇生とAED】 なぜ医師以外にもAEDを認める必要があるのか

 厚生労働省は自動体外式除細動器(AED:Automated External Defibrillator)の使用を医師以外の非専門職にも認める方針を固めた。これは米国心臓協会欧州蘇生法協議会を中心とした国際蘇生法連絡委員会によって提唱された「心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン2000」に基づいている。ではなぜ、医師以外にもAEDを認める必要があるのだろうか。

帝京大学医学部附属病院救命救急センター教授 坂本哲也

 国際ガイドライン2000で示される救命の連鎖(Chain of survival)は、「迅速な通報、迅速な心肺蘇生、迅速な除細動、二次救命処置」という四つの輪で成り立つが、特筆すべきはAEDの使用が「迅速な除細動」として一次救命処置の三つの輪の一つに取り入れられていることである。この点について、国際ガイドライン2000では以下の根拠を挙げている。

1.目撃された突然の心停止では心室細動が最も多い。
2.心室細動に対する最も効果的な治療は電気的除細動である。
3.時間の経過とともに除細動成功率は減少する。
4.心室細動は数分間で心静止に移行する。

■心肺停止時の救命率は1分ごとに7〜10%下がる(国際ガイドライン2000より)


 日本では2003年4月から、医師の包括的指示による救急救命士の除細動が認められ、医師に指示を直接もらわなくても除細動が行えるようになり、傷病者に接触してから数分以内に除細動が施行できるようになった。しかし、救急救命士が現場に到着するまでの時間はそれ以上にかかり、救急救命士が到着した時点では心静止の方が多くなってしまっている。

 国際ガイドライン2000では、救急車を要請してから5分以内の電気的除細動を最重要目標として掲げている。この問題を解決するには、欧米と同様に医師以外の非専門職にもAED使用の門戸を広げるしかなく、厚労省は今回の画期的な方針を打ち出したと考えられる。背景には、より安全で簡便になったAEDの開発と、AEDを組み込んだ心肺蘇生法教育の進歩などがある。

■AEDによる心肺蘇生の教育


 米国ではラスベガスのカジノやシカゴのオヘア国際空港、アメリカン航空の機内などで行われた臨床研究でAEDの効果が既に証明されている。その結果、空港をはじめとした様々な公共施設にAEDが設置されるようになっただけでなく、学校にもAEDが設置され高校生がAEDの講習を受けるようになった。

 日本でもAEDが普及すれば、居合わせた医療従事者が知らぬふりでは済まない時代がすぐに来るだろう。国際ガイドライン2000では、外来や診療所へのAED設置も強く支持しており、この点でも医師に対するAED教育が重要となる。

 次回は「AEDの仕組みと種類」として、AEDの仕組みと原理を解説する。AEDにもいろいろな種類があり、近く、非専門職に認められるようになるのはPAD(Public Access Defibrillator)タイプのAEDになると見られる。今まで救急救命士が使用していた除細動器もAEDの一種だが、PADタイプとは一体どこが違うのかを解説する。

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