2003.09.08

【日本心臓病学会速報】 血管検査・治療を患者家族に“ライブ中継”、病院の情報開示姿勢が高く評価

 冠動脈造影検査や経皮的冠動脈インターベンション術(PCI)の際、家族待合室にもモニター画面を設置、患者家族に手技中の画像を開示する−−。こうした新しい試みが、患者家族にはおおむね好評であることがわかった。患者家族250組を対象としたアンケートでは、回答者の9割がこの“ライブ中継”を「良い」と評価しており、理由として病院の情報開示姿勢を評価する意見が多かったという。医療情報に対する患者・家族側の権利意識が高まるなか、画期的な情報開示手法として注目を集めそうだ。調査結果は、9月8日の一般口演で、新古賀病院(福岡県)心臓血管センターの看護師、中道美代子氏らが報告した。

 新古賀病院は1997年に開設された207床の中規模民間病院で、血管造影室を3室備え、PCIを年間600件、冠動脈造影検査を年間2000件行うなど虚血性心疾患治療に力を入れる病院だ。患者・家族と医療従事者との信頼関係を強め、患者満足度を高める試みの一つとして、この3月から家族待合室にモニター画面を設置。別室で検査・治療を受ける患者の血管透視画像をライブ中継し始めた。中道氏らは、2003年3月から5月までの2カ月間、検査・治療を受けた患者の家族に対し、家族待合室で無記名・自記式のアンケートを依頼。ライブ中継に対する評価や今後の希望などを尋ねた。回収率は96%(240組)。

 回答者の男女比は約1対3で女性が多く、患者との続柄(家族からみた患者)は夫または妻が約半数、親が4分の1を占めた。受診のきっかけは、6割が他院から、4割弱が知人からの紹介。9割は血管造影のライブ画像をみた経験がなかった。

 家族待合室における検査・治療画像のライブ公開に関しては、90%が「良い」と回答。理由のトップは「病院の情報開示姿勢が良い」というもので、次いで「どのような検査・治療が行われるかに興味がある」「患者がどんな検査・治療を受けているかに関心がある」を挙げた人が多かった。

 一方、8%はこうしたライブ中継を「嫌」と回答。理由の大半は「画像を見せられてもわからない」というもので、少数ながら「画像を見るのは怖い」「検査・治療は主治医に任せておけばよい」との回答もあった。「画像を見てもわからない」と答えた人の多くは「画像を説明してくれる人が欲しい」と希望していた。

 この調査結果を中道氏らは、「待合室での検査・治療のライブ中継はおおむね好評だが、家族への情報提供が一方的で、医療内容を家族が理解しにくい傾向がある」と分析。今後も公開検査・治療を継続する一方、血管造影室の専任看護師を新たに「コーディネーター」とし、患者・家族の病歴や社会背景、理解度などを把握した上で、ライブ中継時の説明や検査終了時に医師から行われる説明の補足を実施。このコーディネーターが、入院から退院までの苦情・トラブルへの対応も一元的に行うこととしたという。

 発表後の質疑応答では、フロアから術中に何らかの事故が生じた際の対応に関する質問が出された。中道氏は「モニターを設置する以前から、緊急時は患者家族を別室に呼んで説明を行っている。画像だけでは家族には何が起こったかがわからないため、モニター設置によりトラブルが増加した事例はない」と回答。共同演者の古賀伸彦氏は「実際には患者が急変すると、通常の手技としてモニターのスイッチを切るためモニターには写らない」と補足した上で、PCIの際、再灌流直後に心停止を来した事例が1例あったが、蘇生後に状況を説明したところ、家族からかえって感謝されたとの事例を挙げた。(内山郁子)

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