2003.09.05

【外来小児科学会速報】 「明るく騒がしい」開業小児科実習が温かい医師を作り出す−−会長講演

 開業小児科クリニックでの学生実習をカリキュラムに取り込む大学が増えている。患者や家族とのコミュニケーション、チーム医療、疾病を見抜く眼力などを養う場として貴重な機会になっているようだ。実習にやってきた学生たちは身を乗り出して見学し、感激して帰っていく。受け入れ医にとっても、診療の場を見せることで緊張感が得られ、診療の質の向上に役立つという。第一線の開業小児科医が医学教育の一端を担う価値について、8月30日午後の会長講演で、外来小児科学会今期会長の永井幸夫氏が報告した。

 日常診療の最前線である小児科クリニックにおける医学生実習を正規のカリキュラムに取り入れている大学は2003年6月現在、33を数えるまでになったという。しかし、本格的な採用が始まったのはごく最近になってからのようだ。東北大学では、永井氏が院長を勤める永井小児科医院を含む仙台市内の四つの小児科クリニックの協力を得て、2000年4月から、学生実習を始めている。

 小児科クリニック実習の狙いとして永井氏は、小児プライマリケアの現場を知る、咽頭炎、ヘルパンギーナなど日常的な疾病の基礎知識を身につける、患者・家族とのコミュニケーションやチーム医療の大切さを知る、急を要する疾患を見抜き、すばやい問題解決を行う能力が必要なことを伝える、などを挙げる。もちろん、小児医療に少しでも興味をもってもらうことは、小児科医と大学の共通の目標でもあるという。

 さらに、笑顔で患児に接し、母親にはポイントを押さえた説明をする開業小児科医やスタッフの仕事ぶりを見せることで、温かく思いやりのある、共感的な態度が必要なことを教えていく。学生たちはこうした現場の状況に驚き、感激する。受け入れ側の医師やスタッフにとっても、診療内容や仕事ぶりを見られることは大きなインパクトになり、外来診療の質の向上にもつながるという。

 一方、多忙な日常診療の場で学生実習を受け入れる開業小児科医の協力を得る条件として、学生の評価や感想を大学から受け入れ医にフィードバックすべきだ、と指摘する。「学生の感激や素直な評価に接することが、受け入れる小児科医やスタッフの熱意を作り出す」(永井氏)という。

 「大学とは全く別、明るく騒がしい病院だ」「めちゃ面白かった。これこそ小児科」「先生のようなすてきなクリニックを持ちたい」などの感想が寄せられるという。受け入れ医としては冥利に尽きるというものだろう。医学生たちが、明るく子どもたちに接し、根気強く母親に説明する小児科開業医の現場に接して、温かく思いやりのある態度を身につけるきっかけになるとすれば、小児科クリニック実習は日本の医療の将来にとって、実に重要な役割を果たしていると言えそうだ。(中沢真也)

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