2003.09.05

ESCで発表の3臨床試験「CHARM」「EUROPA」「ESTEEM」、原著論文がLancet誌HP上で早期公開

 8月31日から9月3日までオーストリアViennaで開催された欧州心臓学会(ESC)で発表、注目を集めた3臨床試験の原著論文が、Lancet誌のホームページ上で早期公開された。この臨床試験は、8月31日に「Hotline 1」セッションで発表された「CHARM」「EUROPA」と、9月1日の「Hotline 2」セッションで発表された「ESTEEM」。原著論文はLancet誌9月6日号に掲載される予定だ。以下に試験結果の概略をお伝えする。

◆ CHARM
(Candesartan in Heart failure -- Assessment of Reduction in Mortality and morbidity)

 NYHA心機能分類が主に2〜3度の慢性心不全患者7601人を対象に、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬のカンデサルタン・シレキセチル(わが国での商品名:ブロプレス)の心イベント抑制作用をみたプラセボ対照試験。

 試験は三つのサブ試験から構成されている。左室駆出力(LVEF)が40%以下の4576人は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に対する忍容性で2分し、忍容性がある2548人はACE阻害薬+A2受容体拮抗薬とACE阻害薬単独(+プラセボ)とを比較する「CHARM-Added」試験、忍容性がない2028人はACE阻害薬を用いない「CHARM-Alternative」試験に割り付けた。LVEFが40%を超える、つまり心肥大を伴わない慢性心不全患者3023人は、「CHARM-Preserved」試験の対象とした。

 対象者の平均年齢は66歳、4分の1弱は75歳以上で、7割弱が男性。欧州系白人が9割を占める。LVEFの平均値は38.8%、血圧の平均値は131/77mmHg、平均体格指数(BMI)は28だった。8割が利尿薬を併用しており、β遮断薬とアスピリンは半数強、脂質低下薬とジゴキシンは4割、ACE阻害薬も全体で4割が併用した。追跡期間の中央値は37.7カ月。

 1次評価項目の「心血管死+心不全による入院」は、「CHARM-Added」試験で相対的に15%、「CHARM-Alternative」試験で相対的に23%、カンデサルタン群における発生率が有意に少ないことが判明。LVEFが低い心不全患者には、ACE阻害薬に忍容性がある場合は併用、ACE阻害薬が禁忌なら代替薬として、A2受容体拮抗薬を処方した方が予後が良いことがわかった。一方の「CHARM-Preserved」試験では、心不全による入院率は実薬群で有意に低かったが心血管死亡率は変わらず、1次評価項目に有意差はなかった。

◆ EUROPA
(European trial on Reduction Of cardiac events with Perindopril in stable coronary Artery disease)

 比較的若年で低リスクの冠動脈疾患患者1万2218人を対象に、プラセボ対照試験でACE阻害薬のペリンドプリル(わが国での商品名:コバシル)の心イベント2次予防効果を評価した。

 対象者の平均年齢は60歳、男性が85%を占め、64%に心筋梗塞の既往がある。血圧の平均値は137/82mmHgで、高血圧(140/90mmHg以上)は3割弱、糖尿病は約1割、高脂血症は6割強が合併している。9割がアスピリンなどの抗血小板薬、6割がβ遮断薬、6割が脂質低下薬を併用した。平均追跡期間は4.2カ月。

 1次評価項目は「心血管死+心筋梗塞+心停止(蘇生)」で、ペリンドプリル群(6110人)の8%、プラセボ群(6108人)の10%が到達(相対リスク20%減、p=0.0003)。実薬群とプラセボ群の血圧差は5/2mmHgとわずかな上、高血圧の有無で結果に差はなく、「HOPE」(Heart Outcomes Prevention Evaluation study)試験より低リスクの冠動脈疾患既往者で「HOPE」試験の実薬(ラミプリル)以外のACE阻害薬でも、血圧によらず心イベントを予防し得ることがわかった。

◆ ESTEEM
(Efficacy and Safety of the oral Thrombin inhibitor ximelagatran in combination with aspirin, in patiEnts with rEcent Myocardial damage)

 経口トロンビン阻害薬のキシメラガトラン(欧米での予定商品名:Exanta)を用いたプラセボ対照第2相試験。抗血小板薬のアスピリン併用下で、急性心筋梗塞後の死亡・虚血性イベント二次予防効果を調べた。同薬は経口の抗凝固薬で、このカテゴリーの薬が開発されたのは、ワルファリンカリウム以来60年ぶり。

 急性心筋梗塞患者1883人を、発症2週間以内に、実薬4用量(24mg、36mg、48mg、60mg各1日2回)とプラセボに1:1:1:1:2の割合で割り付けて6カ月追跡。「総死亡+非致死性心筋梗塞+重度の虚血再発」を1次評価項目として比較した。対象患者の平均年齢は69歳で7割が男性、3分の2はST上昇を伴う心筋梗塞。β遮断薬は9割、ACE阻害薬、スタチン系薬は3分の2が併用した。

 実薬群全体(1245人)の12.7%、プラセボ群(638人)の16.3%が、一次評価項目に到達。キシメラガトランの服用で、死亡・虚血性イベントが相対的に24%抑制された(p=0.036)。ただし、効果に用量依存性は認められなかった。副作用の重度出血は実薬群で高い傾向があった(1.8%対0.9%、有意差なし)。肝機能異常は実薬群で用量依存性に多かった。研究グループは最も低い用量(24mg1日2回)を用いた第3相試験で効果と安全性を確認すべきとしている。

 Lancet誌の購読者は、ここで紹介した臨床試験の原著論文の全文を、こちらからダウンロードできる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。また、ESCは今期学術集会で発表された主要な臨床研究を、同学会ホームページの「Clinical Breakthrough 2003」で紹介しており、この3試験も取り上げられている。「Hotline 1」セッションで発表された「CHARM」と「EUROPA」については、「Congress Webcasts」で発表内容を収録した映像を視聴できる(視聴にはWindows Media PlayerまたはReal One Playerが必要)。(内山郁子)

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