2003.08.27

糖尿病・左室肥大合併高血圧患者、ロサルタンに突然死の予防効果か−−「LIFE」サブ解析

 左室肥大がある高血圧患者を対象に、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬のロサルタン(わが国での商品名:ニューロタン)とβ遮断薬のアテノロール(同:テノーミンなど)とを比較した「LIFE」(Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension study)試験のサブ解析で、糖尿病を合併している人の場合、突然死がロサルタン群で有意に少ないことが明らかになった。解析結果は、Lancet誌8月23日号に掲載された。

 「LIFE」研究は、左室肥大がある高血圧患者を対象に行われた、過去最大規模の無作為化比較試験。2002年3月の米国心臓学会(ACC)で発表され、大きな話題を呼んだ大規模試験だ。約9100人を中央値で4.8年間追跡したところ、1次評価項目の脳心複合予後(脳卒中+心筋梗塞+心疾患死)は、ロサルタン群で13.0%有意に低下(Lancet;359,995,2002)。糖尿病の合併者(1195人)を対象としたサブ解析では、こうした予後改善効果がさらに大きくなった(Lancet;359,1004,2002)。

 今回は、糖尿病合併者の心血管死亡例(以前のサブ解析で、ロサルタン群で37%有意に発生率が低下することが示されている)について、後解析で詳細な分析を追加。冠動脈疾患死(突然死、非突然死)と非冠動脈疾患死に分けて、無作為化時点での左室肥大の重症度とFraminghamリスクスコアで補正した上で発生率を比較した。

 その結果、有意な差ではなかったものの、ロサルタン群(586人)では冠動脈疾患死の発生率がアテノロール群(609人)より低い傾向があることがわかった(ハザード比:0.59、95%信頼区間:0.34〜1.01)。非冠動脈疾患死もロサルタン群で低い傾向があったが、低下幅は冠動脈疾患死よりも小さかった(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.38〜1.32)。

 さらに、冠動脈疾患死を突然死(発症24時間以内の死亡)と非突然死に分けると、突然死に対するハザード比は0.49(95%信頼区間:0.26〜0.92)と、ロサルタン群の突然死発生率はアテノロール群のほぼ2分の1であることが判明。一方、非突然死のハザード比は1.01(同:0.35〜2.89)と両群に差がなく、糖尿病合併者でみられた心血管死抑制効果は主に突然死の抑制に拠るものであることが明らかになった。

 この結果を受け研究グループは、今回はあくまでサブ解析の後解析であり、大規模試験による追加検証が必要としつつも、ロサルタンがβ遮断薬のアテノロールよりも糖尿病・左室肥大合併高血圧患者の不整脈死を抑制し得ると結論付けた。

親水性のβ遮断薬は“良い対照薬”ではない?

 β遮断薬には心筋梗塞後などの突然死予防効果があることが知られており、そのβ遮断薬にロサルタンが優る結果となったわけだが、この論文に対する論説(commentary)では、米国New York医科大学のWilbert S. Aronow氏が“全てのβ遮断薬は同じではない”ことに注意を喚起する。親水性のβ遮断薬であるアテノロールは、β遮断薬の中でほぼ唯一、介入試験で突然死予防効果が示されていないためだ。

 Aronow氏は、プロプラノロール(わが国での商品名:インデラルなど)やチモロール(わが国では点眼液のみ発売)、メトプロロール(同:セロケン、ロプレソールなど)、カルベジロール(同:アーチストなど)といった、突然死の抑制効果が臨床試験で実証されている親油性のβ遮断薬を対照薬とし、さらに心室性不整脈や心房細動、左室駆出率などで事前に層別化した上で、左室肥大がある糖尿病患者を対象とした比較試験を行うべきだと論じている。

 この論文のタイトルは、「Effect of losartan on sudden cardiac death in people with diabetes: data from the LIFE study」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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