2003.08.22

ALLHAT「α遮断薬群」の最終報告公表、「心不全誤鑑別」の疑惑を払拭

 「ALLHAT」(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)研究グループは8月18日、2000年1月24日に中止勧告が受け入れられた、α遮断薬群に関する最終報告を公表した。2000年4月にJournal of the American Medical Association(JAMA)誌で報告した結果が1999年12月までのデータに基づいたものだったのに対し、今回はα遮断薬群が中止となった2000年2月までのデータに基づく「完全版」だ。論文はHypertension誌9月号に掲載予定で、このほど同誌ホームページ上で早期公開された。

 数字としては前回の2000年報告と大きく異なることはなかったが、今回の解析では、入院・死亡例のほぼ全例に対し記録によるイベントの再確認を実施。その結果、利尿薬の心不全抑制作用がα遮断薬を上回るのはほぼ確実となった。

 ALLHAT研究の対象は、高血圧以外の冠動脈疾患危険因子を一つ以上持つ55歳以上の高血圧患者4万2418人(関連トピックス参照)。今回は、早期中断されたα遮断薬群(9061人)と、対照群である利尿薬群(1万5255人)との、α遮断薬群の試験中断時までの完全データに基づく比較が行われた。前回報告(JAMA;283,1967,2000)に比べ9232例・年の追加になるという。

 まず血圧の推移を見ると、試験開始時は両群とも146/84mmHgだったが、1年後は利尿薬群137/79mmHgに対しα遮断薬群では140/80mmHg、2年後も順に136/78mmHg、138/78mmHgとなり、併用薬の制限もあってα遮断薬群では利尿薬群と同等の降圧が得られなかった。

 一次評価項目である「冠動脈疾患死または非致死性心筋梗塞」のリスクは、2000年報告と同様に利尿薬群とα遮断薬群で差はなく、また「総死亡」「冠動脈イベント」に関しても両群間に有意差はなかった。α遮断薬群で利尿薬群よりも有意に多かったのは、「心血管系死亡」「脳卒中」「心不全」と「狭心症治療による入院」で、「心血管系死亡」以外は目新しいものではない。

心不全例の詳細なデータが提示、血圧に拠らず利尿薬群で抑制効果が確認

 今回の報告で興味深いのは、α遮断薬群の早期中止の理由となり、議論を呼んだ「心不全」に関するより詳細なデータが提示された点だ。研究者らはまず「両群の血圧差を補正しても心不全発症率の差にはほとんど影響がない」とし、「140/90mmHg未満」の群で比較しても、利尿薬群よりα遮断薬群で心不全発症リスクが大きくなると記している。

 また、「試験前に利尿薬を服用していた例が多いため、利尿薬群以外で心不全が増加した」との批判に対しては、「試験開始時に降圧薬を服用していなかった10%の心不全発症率を比較しても、α遮断薬群における相対リスクは1.54(ただし有意差には至らず)」であった点(α遮断薬群全体では1.80)や、試験開始1年後にも両群間の差が広がり続けているとして、試験前利尿薬服用の影響があったとしてもそれだけで説明の付く増加率ではないと反論している。

 さらに、ALLHATにおける心不全については鑑別法に問題があるという指摘も多いが、今回の報告では心不全を含む心血管系イベントのほぼ全数(利尿薬群98.4%、α遮断薬群98.8%)で、入院記録ないしは死亡証明書によるイベント確認が行われている。

 その結果、α遮断薬群の「心不全による入院・死亡」相対リスクは1.66(p<0.001)で、これらに入院を要さなかった心不全を加えた全心不全の相対リスク1.80(p<0.001)と同様、有意に増加することが判明。ALLHATにおける「心不全誤診断疑惑」はひとまず晴れた形となった。

 ちなみに、ALLHATにおける臨床現場での心不全鑑別には、「SHEP」(Systolic Hypertension in the Elderly Program)研究で用いられたものと類似の基準が用いられている。臨床症状をカテゴリーA(発作性夜間呼吸困難、安静時呼吸困難、NYHA分類3度、起坐呼吸)とカテゴリーB(ラ音:2度以上、下肢浮腫、頻脈:5分間の安静後に120拍/分以上、胸部X線で心肥大、胸部X線で心不全所見、S3ギャロップ音、頚静脈怒張)に分け、両カテゴリーに一つ以上該当項目があることが心不全と診断する条件だ。

 この診断基準は「SHEP」において「他の原因が考えられない明らかな左室機能不全の徴候」として採用されたものだ。ALLHATにおける心不全入院・死亡例に関しては、現在、全例のデータを確認中との情報もある(Hypertension Canada誌2003年3月号)。α遮断薬以外の降圧薬群に関しても、本試験と同様の入院記録・死亡証明書による比較データが待たれる。

 この論文のタイトルは、「Diuretic Versus α-Blocker as First-Step Antihypertensive Therapy. Final Results From the Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial (ALLHAT)」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.12.18 「利尿薬はACE阻害薬、Ca拮抗薬に勝る」−−NHLBIが「ALLHAT」研究結果を発表

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