2003.08.21

糖尿病のスクリーニング検査、ADA勧告の妥当性が検証

 太っていて血圧が高い、家族歴があって高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値が低いなど、糖尿病発症の危険因子を二つ以上持つ人に対して糖尿病のスクリーニング検査を行うとの戦略を採用すると、最も効率良く糖尿病患者を拾い上げられることがわかった。米国の国民栄養調査データを用いた検証の結果で、糖尿病が国民病になりつつあるわが国でも注目されそうだ。研究結果はProceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)誌に掲載予定で、8月18日に同誌ホームページ上で早期公開された。

 この研究を行ったのは、米国Texas大学社会医療科学部門のFlorence J. Dallo氏ら。Dallo氏らは、専門医の意見に基づく勧告として、米国糖尿病学会(ADA)が2002年、「一つ以上糖尿病発症の危険因子を持つ人には、たとえ無症状でもスクリーニング検査を行うべき」と発表したことに着目。この勧告に従うことで、未診断の糖尿病患者をどの程度効率良く拾い上げられるかを検証した。

 検証に用いたデータは、国民の栄養摂取状態などを調べる「米国栄養健康調査」(NHANES)(関連トピックス参照)の第3回調査(NHANES3)。この調査は20歳以上で妊娠していない男女を対象としたもので、年齢、性別と栄養摂取状態に加え、血圧、血清脂質や糖尿病の家族歴、空腹時血糖値などについてもデータが揃っている。

 Dallo氏らは、調査時点で既に糖尿病と診断されていた574人を除き、7703人(うち6515人は非糖尿病:空腹時血糖値が126mg/dl未満、274人は未診断糖尿病:同126mg/dl以上)分のデータを用いてADA勧告を検証した。

 その結果、ADAがスクリーニング検査を行うべきと勧告する「一つ以上危険因子を持つ人」について検査を行えば、未診断の糖尿病患者を100%拾い上げられることが判明。しかし、この「一つ以上危険因子を持つ人」は全体の83%を占め、効率という点では今一つであることもわかった。

 そこでDallo氏らは、「二つ以上危険因子を持つ人」を検査対象とした場合について検討を加えた。すると、検査対象者は全体の59%と少なくなる一方、診断感度は98%となり、未診断糖尿病患者の2%を見落としてしまうものの効率という観点では最適になった。

年齢、脂質代謝異常と肥満が影響力の大きな危険因子に

 また、ADA勧告では危険因子として、1.年齢(45歳以上)、2.人種(白人以外)、3.過体重(体格指数=BMIが25以上)、4.妊娠糖尿病または出生児体重が9ポンド(約4000g)以上、5.糖尿病の家族歴(両親または子供が糖尿病)、6.高血圧(140/90mmHg以上)、7.脂質代謝異常(HDLコレステロール値が35mg/dl以下または中性脂肪値が250mg/dl以上)、8.糖代謝異常(空腹時血糖値が110〜126mg/dlまたは経口糖負荷試験=OGTTの2時間値が140〜200mg/dl)−−の8点を挙げているが、Dallo氏はこれらの危険因子の影響力についても検証した(糖代謝異常については調べていない)。

 すると、最も影響力が強いのは年齢で、45歳以上の人は45歳未満の人よりも約6倍、未診断の糖尿病が見付かりやすい計算になった(オッズ比:5.84、95%信頼区間:3.41〜10.02)。次いで脂質代謝異常(オッズ比:4.11、95%信頼区間:2.83〜5.93)、過体重(オッズ比:2.83、95%信頼区間:1.77〜4.52)の影響力が大きかった。

 このほど発表された平成14年糖尿病実態調査速報(関連トピックス参照)によると、わが国の糖尿病患者数は740万〜1620万人の間と見積もることができる。一方、実際に糖尿病の治療を受けている患者数は約212万人(平成11年患者調査)とされ、未診断・未治療者の比率が極めて高い計算になる。

 未診断者を減らす一つの方策は、受診率が4割程度と言われている一般住民健診などの受診促進だ。しかし、「どのような人を優先的に検査すべきか」を明確にした上で、他疾患で外来受診時にかかりつけ医がスクリーニング検査を行うという、米国流の戦略(関連トピックス参照)も考慮に値するのではないだろうか。治療率の向上も期待できよう。

 糖尿病実態調査では、年齢、性別、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値に加え、身長、体重、血圧、血清脂質と随時血糖値も測定しており、多少精度に欠けるとしても危険因子の重み付けは十分に可能だ。単なる「現状把握」を政策につなげ、その中にかかりつけ医機能を組み込む、エビデンスに基づく提言を医療界に期待したい。

 この論文のタイトルは、「Effectiveness of diabetes mellitus screening recommendations」。アブストラクトは、こちらまで。ADAの糖尿病スクリーニング検査に関する勧告「Position Statement: Screening for Diabetes」は、現在こちらで全文を閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.7.12 カリウム摂取量、血圧とは無関係に脳卒中の危険因子に−−NHEPS研究より
◆ 2003.8.8 糖尿病が疑われる人は約1620万人、実態調査による試算
◆ 2003.2.12 USPSTFが2型糖尿病スクリーニングのGLを改訂、高血圧患者などへの検査を推奨も「全例スクリーニング」可否の判断を再度保留

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