2003.08.19

1型糖尿病患者は交通事故を起こしやすい−−欧米5カ国の共同研究で判明

 糖尿病患者に対する厳格な血糖管理が進む中、無自覚性低血糖による交通事故の増加が危惧されているが、欧米5カ国の1型、2型糖尿病患者を対象とした調査で、1型糖尿病患者の交通事故率は糖尿病がない人の2倍以上になることがわかった。ただし、1型糖尿病患者でも運転前に血糖値を測定する人や、皮下持続注入ポンプ(CSII)によるインスリン投与者では事故が少なく、交通事故を防ぐ適切な手立てがあることも浮き彫りになった。研究結果は、Diabetes Care誌8月号に掲載された。

 調査対象は、米国、オランダ、スイス、ドイツ、英国スコットランドの5カ国の糖尿病クリニックを受診しており、普段車を運転している1型糖尿病患者313人、2型糖尿病患者274人と糖尿病ではない配偶者326人。過去2年間の交通事故歴や運転中の低血糖発生の有無、低血糖による意識障害歴などを、無記名で調査票に記入してもらった。

 対象者の平均年齢は、1型糖尿病患者が42.4歳、2型糖尿病患者が56.7歳、対照の非糖尿病配偶者が50.6歳。女性比率は1型糖尿病が49%、2型糖尿病が39%、非糖尿病が43%で、年間走行距離はいずれも1万1000マイル(約1万7000km)前後だった。

 その結果、過去2年間に何らかの交通事故を起こした人の比率は、1型糖尿病患者では19%になり、2型糖尿病患者(12%)や非糖尿病配偶者(8%)より有意に多いことが判明(p<0.001)。低血糖による意識消失歴がある人の比率(18%対5%)や、過去6カ月間に運転中に低血糖を起こした人の比率(22%対4%)も、1型糖尿病患者で2型糖尿病患者よりも有意に高かった(p<0.001)。

 一方、2型糖尿病患者では、非糖尿病配偶者と事故率に統計学的な有意差はなく、インスリン使用者(159人)と非使用者(109人)にも事故率の有意差はなかった(順に11%、15%)。

 また、交通事故を起こす可能性や予防法について主治医と話し合ったことがない人の比率は、1型糖尿病患者の半数、2型糖尿病患者の4分の3を占め、医療現場では積極的な情報伝達があまり進んでいないことも明らかになった。

 注目すべきなのは、1型糖尿病患者の場合、低血糖による意識消失頻度が少ない人に加え、運転前に血糖値を測る(血糖値が低い場合は運転しない)人や、注射よりも生理的なインスリン濃度調節が可能になるCSIIの使用者で、明らかに事故が少なかったことだ。

 このデータは、医療的な介入を行うことで、糖尿病患者による交通事故を予防できることを示すもの。研究グループは、1.運転前に(長時間運転時は運転中にも)血糖値を測定する、2.血糖値が5mmol/l(90mg/dl)未満の場合は運転しない、3.運転中に低血糖を起こした疑いがある場合は、すぐに運転を止めて糖類を摂取し、血糖値と認知機能が正常に戻るまで運転を再開しない−−の3点を1型糖尿病患者に指導すべきだと強調している。

 なお、わが国では2001年の道路交通法一部改正(2002年6月施行)により、病気などにより意識を失ったことがある人(糖尿病の無自覚性低血糖など)や週3回以上日中に眠り込んでしまう人(重症の睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなど)などに対し、「運転免許証の交付を行わないことができる」と定められた。とはいえ、症状はあくまで自己申告であり、法改正後も糖尿病患者による重大事故事例が報告されている。

 現時点で取り得る最良の手立ては、まず「糖尿病患者は交通事故を起こしやすい」という事実を患者本人に知らせ、その上で必要に応じて医療的な介入を行うことではないだろうか。日常生活上、あるいは職業上、車が欠かせない人に対して適切な指導を行うことが、医療現場に強く求められる時代になったと言えそうだ。

 この論文のタイトルは、「Diabetes and Driving Mishaps: Frequency and correlations from a multinational survey」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

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