2003.08.05

二次性HPT合併透析患者の生存率、ビタミンD2製剤投与者でD3製剤より良好

 二次性の副甲状腺機能亢進症(HPT)を合併した透析患者6万7000人に対する米国の後ろ向き(レトロスペクティブ)研究で、HPT治療に活性型ビタミンD2製剤を用いていた患者の方が、活性型ビタミンD3製剤の使用者よりも、年間死亡率が絶対値で4%も低いことがわかった。わが国で発売されている活性型ビタミンD製剤は全てD3製剤で、D2製剤は市販されていないが、生命予後に大きな違いをもたらす可能性があるだけに臨床ニーズが高まりそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌7月31日号に掲載された。

 ビタミンDには複数の種類があるが、生理学的活性を持つのはビタミンD2とD3。D2はシイタケなど植物性食品、D3は魚介類などの動物性食品に含まれるが、体内での作用はほぼ変わらないとされる。透析患者のほぼ半数は二次性HPTを合併するが、ビタミンD製剤はこの二次性HPTの治療薬としても用いられている。ただし、天然型のビタミンD製剤は血中半減期が長く、副甲状腺機能が亢進した人が使うと、副作用として高カルシウム血症の発症や高リン血症の悪化が起こる恐れがあった。

 そこで開発されたのが、血中半減期が短く、高カルシウム血症や高リン血症を来しにくいビタミンD誘導体。なかでも活性型D3製剤であるカルシトリオール注射剤(1,25(OH)2D3、適応商品名:ロカルトロール)は広く使用されてきた。一方、米国では1998年に、活性型D2製剤のパリカルシトリオール注射剤(19-nor-1,25(OH)2D2、米国での商品名:Zemplar)が承認。高カルシウム血症などの頻度が低いとされ、多くの患者で使われるようになったが、既存のD3製剤と比較した場合の長期予後はわかっていなかった。

 全米1000カ所以上に透析クリニックを展開する米国Fresenius Medical Care North America社のMing Teng氏らは、米国Harvard大学Massachusetts総合病院のRavi Thadhani氏らと共同で、同社のクリニックで透析を受けている患者データを解析。1999〜2001年の3年間に、カルシトリオールまたはパリカルシトリオールの投与を新たに開始した透析患者6万7399人について、年間死亡率を後ろ向きに評価した。

 対象患者の平均年齢は約60歳、男女比はほぼ半々で、治療開始までの透析期間は2年弱。4割弱が糖尿病性、4割弱が高血圧性の腎不全だった。治療開始時に使用したビタミンD製剤は、2万9021人がパリカルシトリオール、3万8378人はカルシトリオールで、うち1万6483人は評価期間中に一方から他方へと薬剤を変更した。

 薬剤を途中で変更した人を除いて解析すると、パリカルシトリオールのみを使用した1万9031人中3417人、カルシトリオールのみを使用した3万471人中6805人が、評価期間中に死亡。年間死亡率はパリカルシトリオールのみの使用者が18.0%、カルシトリオールのみの使用者が22.3%で、絶対値でも4%の有意な差となった(p<0.001)。年齢、性別、人種や原疾患、透析期間、評価開始時の生化学検査値など主要な背景因子で補正しても、パリカルシトリオール使用者の死亡リスクはカルシトリオール使用者より相対的に16%低くなった(ハザード比:0.84、95%信頼区間:0.79〜0.90)。

 さらに、途中で薬剤を変更した人の2年生存率は、カルシトリオールからパリカルシトリオールへ変更した人で73%、パリカルシトリオールからカルシトリオールへ変更した人で64%となり、パリカルシトリオールに変えた人で有意に高くなった(p=0.04)。血中リン濃度、カルシウム濃度が上昇した人の比率は、カルシトリオール使用者で有意に少なかった(p<0.001)。

 今回の研究は大規模ではあるが、あくまで後ろ向きの観察研究であり、「(パリカルシトールの方がカルシトリオールよりも透析患者の生命予後を改善すると)結論するには介入研究で確認する必要がある」と研究グループは釘を刺す。また、腎移植が米国ほど一般的ではなく、透析期間が長いわが国に、今回得られたデータがそのまま当てはめられるかどうかは不明だ。とはいえ、薬剤の違いで、年間死亡率が2割近く低くなるとの示唆が持つインパクトは大きい。活性型ビタミンD2製剤が日本でも使えるようになることを期待したい。

 この論文のタイトルは、「Survival of Patients Undergoing Hemodialysis with Paricalcitol or Calcitriol Therapy」。アブストラクトは、こちらまで。この件に関するMassachusetts総合病院のニュース・リリースは、こちらまで。(内山郁子)

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