2003.07.26

【SARS速報】 インターフェロンに抗SARSウイルス効果、ヒト培養細胞を用いた試験管内実験で示唆

 抗ウイルス活性を持つサイトカインであるインターフェロン(IFN)に、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスの増殖抑制効果があることが、ヒト培養細胞などを用いた試験管内実験で判明した。3種類のIFNのうち、インターフェロンβ(IFNβ)に特に高い抗SARSウイルス活性が認められたという。ドイツFrankfurt大学ウイルス医学研究所のJ. Cinatl氏らの研究で、Lancet誌7月26日号に掲載された。

 IFNは生体内で産生されるサイトカインで、細胞表面のIFN受容体に結合、2種類の酵素の活性化を通してウイルスのメッセンジャーRNA(mRNA)の分解や翻訳阻止を行い、幅広い抗ウイルス効果を発揮する。いわば“汎用性の高い抗ウイルス薬”で、新華社通信の報道によれば、中国では主に医療従事者を対象に、SARS予防目的での組換えIFNα噴霧薬の臨床試験が4月から始まっているという。しかし、SARSウイルスに対する効果を試験管内レベルで検証した研究結果は報告されていなかった。

 Cinatl氏らは、以前にグリチルリチンの抗SARSウイルス効果を検証したのと同じ方法で(関連トピックス参照)、組み換えIFNα、IFNβとIFNγについて抗SARSウイルス効果を評価。評価を行う細胞系として、ミドリザル腎臓由来のベロ(Vero)細胞と、ヒト腸管上皮細胞であるCaco2細胞を用いた。SARSウイルスとしては、Frankfurt大学に入院したSARS患者から単離したFFM-1株と、香港の患者から単離されたSARS-CoV Hong Kong株を使用した。

 その結果、細胞株やウイルス株を問わず、IFNβの選択性指数(50%細胞毒性濃度=CC50と50%有効濃度=EC50の比)が最も高くなることが判明。IFNαにも有効性は認められたが、選択性指数はIFNβの50〜90分の1だった。IFNγはVero細胞ではINFαよりわずかに抗SARSウイルス活性が高かったが、ヒト細胞であるCaco2細胞では全く効果が無かった。IFNβの選択性指数は、Caco2細胞でVero細胞より5〜10倍高く、ヒト細胞に感染したSARSウイルスに対してより有効性が高いことが示唆された。IFNβにはSARSウイルスの増殖抑制だけでなく、感染阻止(予防)効果も認められた。

 IFNは結合する受容体の種類により1型と2型に大別でき、IFNαとIFNβは1型、IFNγは2型になる。その意味でIFNαとIFNβの作用は基本的には同じだが、「(受容体に結合後、活性化される酵素の)誘導効率が、一方が他方より良い可能性がある」と研究グループは考察。今回の検討で最もSARSウイルスに対する選択性が高かった「IFNβは単独、あるいは他の抗ウイルス薬との併用で、SARSの治療薬として使用できる可能性がある」と提言している。

 この論文のタイトルは、「Treatment of SARS with human interferons」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.6.17 SARS速報】グリチルリチンに抗SARSウイルス効果、試験管内実験で示唆

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