2003.07.25

鎮痛薬の連用による慢性の痛み、やはり「頭痛」が最多−−Head-HUNT研究より

 約2万3000人の成人住民を11年間追跡したノルウェーの地域コホート研究で、追跡開始時に週1回以上鎮痛薬を服用していた人では、鎮痛薬の服用習慣がなかった人よりも、11年後に片頭痛を発症しているリスクが13倍以上になることがわかった。この相対リスクは片頭痛以外の頭痛や腰痛など他の部位の痛みと比べると極端に高く、11年後に鎮痛薬を連用している人だけで分析するとさらに際立つことも判明した。研究結果は、Neurology誌7月22日号に掲載された。

 鎮痛薬を飲み続けると、それがかえって痛みを引き起こす−−。こうした薬剤過量性の痛みとして、臨床現場でしばしば遭遇するのは頭痛だ。これは「鎮痛薬頭痛」(薬剤過量性頭痛=MOH)と呼ばれており、治療には原因薬剤からの離脱が必要になる(関連トピックス参照)。しかし、こうしたMOHにおいて、薬剤の連用は原因というより増悪因子であるとの議論もあり、さらに、頭痛以外の痛みが薬剤の過量服用によって引き起こされ得るかどうかについては十分なデータがなかった。

 ノルウェー科学技術大学臨床神経科学部門のJ.-A. Zwart氏らは、地域コホート研究である「HUNT」(Nort-Trondelag Health Study)研究の参加者データを解析。第1回調査(HUNT-1)時の鎮痛薬の服薬状況と、11年後に行われた第2回調査(HUNT-2)時の各種痛みへの罹患状況との関連を調べた。

 両調査に協力した解析対象者数は、男性が1万2012人、女性が1万708人の計2万2720人(第1回調査参加者は3万2067人)。平均年齢は男女とも40歳代後半だが、鎮痛薬の服用頻度と年齢、教育年数とは相関がみられたため、解析に当たっては多変量解析で補正を加えた。

 11年後の「HUNT2」調査時に「慢性の痛み」があった人数は、片頭痛が200人、片頭痛以外の頭痛が538人、頚部痛が1652人、腰痛(low-back pain)が1418人(複数回答)。初回調査時(「HUNT1」調査)における鎮痛薬の服用頻度で比較すると、痛みの種類・部位に関わらず、鎮痛薬を「ほとんど服用しない」「週1回未満」「週1回以上」の順で罹患率が有意に高くなった。こうした相関に男女差はなかった。

 次に研究グループは、当初に鎮痛薬の服用習慣がなかった人の罹患率を1とした場合の相対リスクを、痛みの種類・部位別に評価した。すると、当初に週1回以上鎮痛薬を服用していた人では、片頭痛罹患の相対リスクが13.3(95%信頼区間:9.3〜19.1)となり、片頭痛以外の頭痛(相対リスク:6.2)、頚部痛(同:2.4)、腰痛(同:2.3)よりも突出して高いことが判明した。

 さらに、11年後の「HUNT2」時点で鎮痛薬をほぼ毎日連用している、つまり薬剤過量性の痛みであることが強く疑われる人だけで比較すると、相対リスクは順に37.6、14.4、7.1、6.4となった。なお、罹患者に占める薬剤過量性疼痛の比率は、片頭痛で55%、片頭痛以外の頭痛で41%、頚部痛で25%、腰痛で79%だった。

 以上から研究グループは、今回の研究から、1.鎮痛薬を週1回以上服用している人では将来の慢性痛罹患率が高い、2.慢性痛のなかでも特に“薬剤過量性の痛み”のリスクが高まる、3.慢性痛、薬剤過量性の慢性痛のいずれも片頭痛が最も多い−−の3点が示唆されたと考察。初回調査時に慢性痛の罹患の有無を調べていないなどの限界はあるものの、鎮痛薬の服用習慣が片頭痛と関連するだけでなく、原因となっている可能性が高いと論じている。

 論文に対する論説では、米国Albert Einstein医科大学神経内科部門のRichard B. Lipton氏らが、初回調査時に慢性痛の罹患を調べていない点はこの研究の弱点であり、関連性があることは事実だが因果関係までは証明できていないと指摘。とはいえ、現時点ではMOHを予防するという観点からも、月10日以上は鎮痛薬を飲まない、必要に応じ予防薬で頭痛の発症頻度を減らす、(肥満や高血圧、極度のストレス、過量飲酒など)既知の危険因子を軽減するなどの指導を行うべきだと提言している。

 この論文のタイトルは、「Analgesic use: A predictor of chronic pain and medication overuse headache」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.10.11 「鎮痛薬頭痛」の発症パターンに薬剤差

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