2003.07.24

魚類はアルツハイマー病発症リスクを低下させる−−米研究

 週に魚類を少なくとも1回食べる人は、食べない人に比べアルツハイマー病発症リスクが60%減少するとの前向きコホート研究が、Archives of Neurology誌7月号に掲載された。米国Rush健康加齢研究所のM. C. Morris氏らによる研究だが、興味深いことに、魚に含まれる不飽和脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)はアルツハイマー病発症抑制的に働いたのに対し、エイコサペンタエン酸(EPA)にはそのような作用は認められなかった。

 この研究は、米国Illinois州Chicagoに住む65〜94歳の高齢者を対象とした追跡研究。最初に認知機能検査を行い、アルツハイマー病ではないことが確認された人を、平均3.9年間追跡。うち815人について、詳細な調査票で食事の実態を把握し、食生活とアルツハイマー病発症との関連を評価した。

 食事の実態把握には、詳細な自己記入式の半定量食事頻度質問票(修正ハーバード式FFQ)を使用。食物だけではなくビタミン剤や調理油まで摂取頻度を把握した。質問票による食事調査は、追跡開始時から平均1.9年後に実施している。

 食事内容を知らされていない研究者の鑑別により、追跡期間中に131人がアルツハイマー病を発症したが、魚を週に1回以上食べる人の発症リスクは、魚をほとんど食べない人よりも少ないことが判明。年齢など他の関連因子で補正後の発症相対リスクは0.4(95%信頼区間:0.2〜0.9)となった。

 この研究ではFFQとデータベースの連動により、摂取食物から各種栄養素を定量化できる。そこで、脳細胞膜の構成成分であるn-3系(ω-3系)不飽和脂肪酸とアルツハイマー病発症の関係を見ると、予想通り、n-3系脂肪酸摂取が多くなるほど発症が減少するという有意な傾向が認められた。

 食事から摂取するn-3系脂肪酸の代表格は、αリノレン酸、EPAとDHAで、後2者は魚類からの摂取が中心となる。研究グループは、こうした脂肪酸の種類別の摂取量とアルツハイマー病発症との関連を調べた。すると、意外なことに、代謝されてDHAになるEPAの摂取量とアルツハイマー病の発症とには有意な関連はなかった。一方、DHA摂取の増加は発症リスク低下と有意に関連していた。この結果は、他の因子やビタミンE摂取、また心血管系イベント既往で補正しても同様だった。

 EPAにアルツハイマー病抑制作用が認められなかった一因として、Morris氏らは「全体として摂取EPA量が少ない」点を指摘する。本研究では、EPA摂取量5分位の最高位でさえ1日摂取量は0.03gでしかない。いわゆる「脂の少ない魚」を、参加者の多くが食べている点に起因する可能性があるという。

 アルツハイマー病抑制における魚類摂取の有用は他の観察研究でも報告されているため、同氏らは魚類がアルツハイマー病のリスクを減少させる可能性を示唆するが、同号の「論説」において米国Case Western Reserve大学のR. P. Friedland氏は、アルツハイマー病の初期に食の嗜好が変化するとの報告を紹介。「早期アルツハイマー病の患者が魚を好まなかった」可能性を指摘している。Morris氏らは追跡開始時に認知機能の軽度低下がみられた人を除いた解析も行っており、結果は変わらなかったとのことだが、Friedland氏の指摘の蓋然性を判断するにはより長期間の追跡が必要となるだろう。

 この論文のタイトルは、「Consumption of Fish and n-3 Fatty Acids and Risk of Incident Alzheimer Disease」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

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