2003.07.18

アトピー性皮膚炎治療薬「プロトピック」の小児用製剤が承認、今秋にも発売へ

 藤沢薬品工業が開発した非ステロイド性のアトピー性皮膚炎治療薬「プロトピック」(一般名:タクロリムス水和物)の小児用製剤が、7月17日に承認された。薬価収載を経て今秋にも発売する。今年6月に薬害監視団体から不承認を求める要望書が厚労相と薬事分科会委員に送付されるなど、同薬の審査過程には波乱がみられたが、長期使用時の有害事象の発現状況調査と癌原性に関する追加動物実験を行うとの条件付きでの承認となった。

 タクロリムス水和物は、同社が筑波山麓の土壌から分離した放線菌、Streptomyces tsukubaenesisが産生するマクロライド系化合物。強力な免疫抑制作用があり、わが国では1993年6月から免疫抑制薬「プログラフ」として注射薬と経口薬が発売された。1999年11月には、外用薬が16歳以上の成人向けアトピー性皮膚炎治療薬「プロトピック軟膏0.1%」として上市、日本国内では「毎月5万人以上に処方されている」(藤沢薬品工業広報部)という。

 今回承認されたのは、成人向け(0.1%)よりも濃度が低い0.03%の軟膏で、2〜15歳の小児用。既に欧米では小児用としても承認、米国では3年の使用実績がある。この審査の最終段階で、特定非営利活動法人(NPO法人)の医薬ビジランスセンターと医薬品・治療研究会が6月17日、「プロトピック(タクロリムス水和物)0.03%軟膏の不承認を求める要望書」を、坂口厚生労働大臣と薬事・食品衛生審議会の薬事分科会各委員に送付。医薬品第一部会への差し戻しを要請した。

 要望理由の骨子は、同薬が局所・全身の免疫抑制作用を通し、発癌を促進する恐れがあるというもの。低濃度の0.03%軟膏でも、動物実験では発癌性が示されているとの見解を提示、同団体による要望書提出は新聞などでも報道された。この見解に対し、同審議会は最終的に承認は妥当と判断。十分な市販後調査と追加動物実験を条件に、承認される運びとなった。

 今回意見が出された発癌性に関する藤沢薬品工業の見解は、添付文書に記載された塗布量で適正に使用する限り、高濃度、低濃度製剤のいずれも発癌性の問題は生じないというもの。同社広報部によると、承認条件は1.長期使用例での免疫抑制に伴う有害事象の発現状況を調査する、2.癌原性に関する追加動物実験を行い、新たな知見が得られた場合は報告する−−の2点。いずれも、具体的な実施方法などについては、今後厚生労働省と協議する。

 日本では「プロトピック」が成人に対し3年以上使われているが、同薬の使用との関連が否定できない皮膚癌やリンパ腫などの発生は、1例も報告されていない。同社広報部によると、米国では小児及び成人の計1万人を対象とした市販後調査で、皮膚癌の発生については自然発症頻度と差がないとの結果が得られているが、悪性リンパ腫などその他の癌については、広報部では把握していないという。

 ちなみに、米国食品医薬品局(FDA)が2000年12月に同薬を承認した際の審査資料によると、因果関係は不明なものの、治験参加者のうち成人二人が悪性リンパ腫(耳下腺リンパ腫と皮膚T細胞性リンパ腫=CTCL)を発症。33人(成人19人、小児14人)にリンパ節腫脹(うち6人には明確な病因なし)が認められている。

 アトピー性皮膚炎は社会生活に大きな影響を及ぼす疾患で、病状をコントロールすることで得られるメリットと、顕在・潜在性のリスクをどう勘案するかは、患者自身の価値観にも深く関わる問題だ。治療の選択の幅を広げる薬であることは間違いない以上、医療者そして患者に対し、利益とリスクに対する正確・迅速な情報提供を継続的に行うことが求められるだろう。

 なお、欧米では同様の免疫抑制作用を持ち、塗布時の光線過敏性が少ないとされるクリーム剤「Elidel」(一般名:ピメクロリムス)が、小児・成人のアトピー性皮膚炎治療薬として昨年から販売されている。わが国ではノバルティス ファーマが臨床試験中で、現在第2相以降。

 この件に関する藤沢薬品工業のニュース・リリースは、こちらから閲覧できる。医薬ビジランスセンターと医薬品・治療研究会が提出した要望書に関しては、こちらまで。FDAの審査資料は、こちらで公開されている。(内山郁子)

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